3月11日の毛布
岩手県立釜石商工高等学校2年生・川畑勇真(かわはた・ゆうま)さん。自宅は「全壊です。ドーンときて、傾いてて使えない。1階もグチャグチャで。今は、新日鐵のアパートに」。震災直後は体育館に避難していた。
「体育館で俺ら毛布配ったんですよ。配ったが故に毛布をもらえなかった(笑)。しょうがないんで、段ボール敷いて、グランドピアノのカバーの布を引っこ抜いて一晩過ごしてました」
川畑さんが「学校では、名目上は保育士って書いて出してるけど」と前置きして話してくれた将来就きたいと思っている仕事は、アニメーターだ。川畑さん、好きなアニメーター、いますか。
「最近のはあんま好きじゃなくて……。『時をかける少女』すげえ好きなんで、貞本義行さんとかも好きなんですけど。アニメーターっていうか、自分の描きたいものが描ければいいかなと。好きなイラストレーターといえば、Na-Gaっていうイラストの人が。『リトルバスターズ!』っていうゲームの人なんですけど」
「リトルバスターズ!」は2007年のPC版発売を最初とする恋愛アドベンチャーゲーム。現在はシリーズがゲーム専用機に移植され、コミックも刊行。2012(平成24)年からはテレビアニメーションも始まった。その原画を描いているのがNa-Gaだ。「アニメーター」ということばは総称で、一般的なアニメーションの制作工程は、川の流れに喩えると以下のように分かれる。まず上流で「原画家」が絵を描く。その絵を元に下流で「動画マン」が(たとえが極端だが)パラパラマンガの要領で動かすための絵を大量に描く。川の中流で原画家とやりとりし、動画マンに指示を出す絵づくりの現場監督が「作画監督」。全体を司るのが総監督だ。川畑さんが名を挙げたNa-Gaは「原画家」に該当する。
アニメーターになりたいと思ったきっかけは。
「小学校の高学年ぐらいの時に、『新世紀エヴァンゲリオン』観まして」
どのエヴァ?——そう訊いたのは、同作品のテレビアニメーション初回放映が1995[平成7]年、川畑さんが生まれる前の年だからだ。
(明日に続く)