疑わしい先行者優位

よく言われる「先行優位性」とは何だろうか。例えばMicrosoftがOSのシェアを持っている、飲食大手が良い立地を確保している、新規発行が難しい免許を取得している。このようなものは先行優位性の一種として評価できる。

一方で先行している企業が後発から激しく追撃され、シェアを逆転されることは珍しくない。

例えばM&A仲介を考えてみよう。M&Aキャピタルパートナーズやストライクといった企業が特に2012年頃から大きく成長し、スタートアップ関係者らはその利益率および株価に驚嘆した。スタートアップには自社の売却を通じM&Aに携わった経験を持つ層も多くいた。

自分にも一定の知見があり、かつ驚異的な株価を狙うことができるのではないかと、多くのプレイヤーが参入を開始した。外部から単純に見ると「売り手と買い手のネットワークが売り物となるM&A仲介に後発から入ると厳しい戦いになるのではないか」と思える。しかし後発でも成長企業は数多く登場したのである。これはなぜだろうか。

M&A仲介の場合は、SNSのようなネットワークと異なり、買い手・売り手ともに人が介在する営業が必要となる。そうするとM&A仲介会社は営業の人員が強烈な制約条件として働き、確保することができるシェアがどうしても一部に限られる。

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効率的に稼げない案件は捨てられる

そのため営業人員を囲い込まない限り、特定の企業が高いシェアを独占できないのである。M&A仲介という事業は、特定の事業者がシェアを独占できる構造にはなく、必然的に一定程度は分散するようになっているのだ。これはコンサルティングビジネスとも近い構造である。

さらに、先行者は「効率的に手数料を稼げる案件」に注力する運命にある。例えば専任契約やリテイナーフィー(成約しなくても支払われる月額)が取れる案件である。

営業に対する報酬体系もこのような契約獲得を行う目的で作られていくため、専任契約ではない案件は非優先案件となり、専任契約を取れない営業は冷遇される。効率的に稼げない案件は捨てられるのだ。これが新規参入者たちにとっての参入機会となる。

効率的に儲けることができない案件であっても、ビジネスを成立させられることがわかれば、一点突破の営業とマーケティングで参入できる。

「この一点からシェアを獲得し、追撃し追い越す」という考えに基づき、TWOSTONE&SonsはM&A仲介業界に参入し、株式会社M&A承継機構を立ち上げた。必要な能力はキーパーソン採用を通じ獲得した。