先行優位性が発揮される例
一方で先行優位性が機能しやすいビジネスにおける追撃戦の事例をフリマアプリを例に見てみよう。記憶に新しいものには、先行するフリルをメルカリが追撃した例がある。
フリマアプリはM&A仲介とは異なり、1社が独占的に成功しやすい構造にある。そのため事業者には「顧客属性の棲み分けでシェアをとる」など悠長なことを言っている暇はない。成功のためにはその1つの席を巡り全力で追撃しなければならない。
ビジネスモデルもUIも類似であれば、最後は物量戦になる。つまり資金と人材を調達し、高速で体制を組み上げ、効率的に資源を使いこなすことができたプレイヤーが勝つことになる。
フリル創業者である堀井翔太氏が、メルカリ現取締役である小泉文明氏にインタビューをした面白い記事がある。この記事を見ると、いかに投入する資金と人材で勝つかということに、代表である小泉氏が焦点を当てていたのかがわかる。
顧客属性で棲み分けることが難しく、市場規模が大きなビジネスに参入する際は、物量戦を戦い抜く覚悟が必要だ。
戦い抜く覚悟が絶対的に必要
プラットフォーム系のビジネスは熾烈な物量戦を勝ち抜いたプレイヤーが独占的な立場を獲得するため、後発が追撃することが非常に困難である場合が多い。
PayPayのような決済プラットフォームも物量戦の好例であった。ここでソフトバンク宮内CEOのPayPayに関するインタビューを引用しよう。
A.簡単な話です。金をつぎ込むだけです(笑)
ここで何らかの特殊な技術や他の事業とのシナジーのような逃げの回答をせず、正面から戦い抜く覚悟を示していることは実に素晴らしい。
正面から戦う覚悟をせず、「棲み分け」「特許」「他事業部とのシナジー」のような顧客視点からは不必要な要素を並べる戦略は甘えが出てしまっている可能性が高い。
戦い抜く覚悟はどのようなビジネスでも必要だ。戦略は戦いを有利に進めるには必要だが、いくら頭で考えたとしても、努力をせず、簡単に大勝利を収められる戦略は基本的にはない。正面衝突を避けようとすれば極めて小さな市場を対象とせざるを得ない。
大規模な市場であり、自社の強みがあるから楽に勝てる戦略が発見出来るという前提は危険な考えである。
Uberのようなモビリティプラットフォームも同様だ。世界中で激しい物量戦が繰り広げられ、それを生き抜いたプレイヤーのみが生き残った。
大規模な投資をできる見込みがそもそもないのであれば、物量戦になるビジネスに参入するべきではない。