※本稿は、中村陽二『インサイト中心の成長戦略 上場企業創業者から学ぶ事業創出の実践論』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
「好き」をビジネスにすることの意外な落とし穴
一見楽しそうに見えるが、生半可な情熱では通用しない方法が「情熱」から始めることである。
アパレルD2Cのyutori創業者の片石貴展氏は15歳から古着カルチャーに浸かっており、アパレルに関するビジネスに取り組むのは自然なことであった。
筆者はよく「好きなものをビジネスにしたい」と相談されると「まず顧客と競合を見よう」と推奨している。
以下の問いに答えられるだろうか。
□顧客はあなたが提供したいと思っているサービス・商品に十分な対価を払うか?
□あなた以外にもそのサービス・商品を好きな人はいる。その人たちより長期間、高い情熱で取り組み続け、格段に良いと思えるサービス・商品を提供できるか?
これに対して「他社が何をやっているかは調べていないし、どうやったら対価を貰えるかは想像できない。他社よりも優れたものを作れる自信が明確にあるわけではない」のであれば、ビジネスとして検討する遥か手前にいることを認識する必要がある。
筆者自身、好きな趣味は多いが、競争が過剰になる傾向があるため、趣味をビジネスにしようとはほとんど思わない。趣味であれば、趣味と割り切ったほうがよいだろう。
先行者を調べて見たところ、NPOや地主が趣味で行っているような事業(カフェに代表される)が多いようであれば収益性に乏しい可能性が高い。構造的な収益性の限界を突破するには「好き」だけが根拠では心もとない。
「他人にとっては面白くなさそうだが、自分にとっては大変面白いテーマ」を見つけるのが理想だ。筆者自身が経験した事業では「カスタマーサポート・BPO」はがそれに該当する。カスタマーサポート・BPOを趣味としている人はあまりいないだろう。
ただ、カスタマーサポート・BPOの市場規模は比較的大きく、筆者にとっても技術活用という観点で興味深いテーマであったため「好き」と考えることができた。