長期間競合よりもやり抜く覚悟が必要

様々な事業を検討したプログリット創業者の岡田氏が最終的に事業領域として選んだのは、「英語教育」であった。

岡田氏は過去に英語に対して苦手意識を持っていたが、英語学習に励んだ結果英語力が上達して人生が変わったという経験を持っていたため、このテーマであれば自分は競合企業よりも長期間、熱意を持ってやり抜けるという自信を持つことができたという。

最終的には「長期間情熱的にやり抜ける」ことが持続的な優位性の源泉となる。特に英語教育やアパレルのようなコンテンツがぶつかり合うビジネス(以下アパレル、ゲームなどスペックで比較されるよりも特定のブランド・商品が持つコンテンツが重要な競争力となるビジネスをコンテンツ系ビジネスと呼ぶ)では細部まで情熱とこだわりを持ち続けられるか否かが業績を大きく左右する。

yutoriの片石氏は過去撤退になってしまったブランドを振り返ると、その要因について「ブランドプロデューサーが細部までこだわってクオリティを追求できなかったから」だと振り返る。

特にコンテンツ系のビジネスにおいて細部のこだわりに欠けるサービス・商品は、より強いこだわりを持った競合に負けるのが必然だ。

これはスクール、アパレル・アクセサリー、音楽、イベントのように、体験の良し悪しが事業の成否そのものになるビジネスにおいては決定的である。

料理学校に通う人々
写真=iStock.com/Satoshi-K
※写真はイメージです

情熱を持てない領域へ参入した事例

逆の例を挙げると、TWOSTONE&Sonsの高原氏が参入した高齢者旅行事業がある。これは同社の展開する受託事業と同じく、自社サービスを立ち上げるための資金集めを目的に考えた事業である。

高原氏は「高齢者が増えるなら彼らに向けたビジネスをやるべきだ」というシンプルな考えのもと、高齢者に特化したバスツアー事業に参入することにした。事業立ち上げ時は主にチラシなどを使って集客し、一定の成果を得られた。

しかし最終的には、このビジネスを自分たちはやり続けられないと判断したのだ。

高齢者に特化した旅行事業は長期に渡り努力をするからこそ、安定した顧客基盤が確立でき、利益を上げ続けられるものだった。裏を返せば短期的に取り組んでもあまり儲からない。

このような事業に必要なのは「情熱」である。長期間、情熱を注ぎ続けることが成功の条件となるが、それほどの情熱を自分たちは持ち続けられるだろうか? 高原氏はこの問いについて真剣に考え、最終的に撤退という判断を下した。

安定した需要がある事業は、継続すれば能力と顧客基盤の両面が強化されていくが、長期間情熱を注ぎ続けられるかどうかが必須条件なのだ。