「窮屈な時代」であっても企業は対応せざるを得ない

さらに微妙な問題もある。

牛角のキャンペーンに対して、「牛角に問い合わせたところ、『性自認女性でも可』だそうですよ」という真偽不明の情報が拡散した。これに対し牛角側は「店舗にて適宜判断します」と回答している。

ちょうど、トイレや公衆浴場などでのトランスジェンダーの扱いに対する議論が起きている。

パリオリンピックのボクシング女子で、性別をめぐる適性資格が議論になったばかりだ。ここで、性自認も身体的特徴も女性であっても、遺伝子的には男性と判定されることがある――という事実が広く知られるようになった。

「男女を区別する」という行為自体が困難になっているし、区別することが不適切と見なされるようになりつつある。

「揚げ足取り」と言われるかもしれないが、女性が少食だというのは、統計的な傾向の話であり、少食な男性もいれば、大食いの女性もいる。

現代が多様性の時代であることを考えれば、「女性は注文量が少ない傾向があるから割り引く」という説明も、不適切とは言わないまでも、時代にそぐわない可能性もあるだろう。

「窮屈な時代になった」と思わざるを得ないが、企業も時代に合わせて変わらざるを得ないし、変化によって新たなチャンスも生まれるだろう。

性別で分けるキャンペーンは控えるべき

今回の牛角のキャンペーンは短期間に行われるものであるし、「倫理上問題がある」とまでは言えないので、中断する必要はないと思う。

ただし、今後は女性に限らず、対象を限定したキャンペーンは控えたほうが良いと思う。

現在でも、女性用のメニュー、女性向けの割引サービスを提供している飲食店も少なからずあるが、大手の飲食チェーンは批判を浴びやすいし、影響力も大きい。女性差別に当たらずとも、意図せずジェンダーバイアスを強めてしまう可能性もある。