まるで内輪のパーティー…演説力は素人同然

女性を敵に回すヴァンス氏の言動は、自身の支持集めに不利に働く。

ヴァンス副大統領候補が支持を集められない理由について、米NBCのニュース・エンタメ番組「レイトショー」ホストのスティーブン・コルベア氏は、トランプの極右的な立場を和らげることができず、郊外の女性にアピールできていないためだと指摘している。

英ガーディアン紙によると、コルベア氏はまた、彼の演説スタイルが「同僚だけを招待した独身パーティーの新郎のようだ」と評されるほど魅力に欠けており、これも致命的だと指摘している。女性受けしない政策だけでなく、スピーチで男性層の興味を惹くこともできていない。

加えて、出身州も不利だとされる。ヴァンス氏はオハイオ州出身だが、同州では既にトランプ陣営が支持を得ている。このため、ヴァンス氏を副大統領候補に指名したことによる選挙戦略上の利点が少ないとの観測がある。

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共和党内でも懸念が高まる

不利な状況はまだある。「子供のいない猫好きの女性」発言で女性政治家を敵に回したヴァンス氏は、昨年、有権者の女性たちからも反感を買った。

ヴァンス氏は、黒人女性たちが中絶のためにカリフォルニアを訪れているという陰謀論を披露し、これが批判の的になっている。フィナンシャル・タイムズ紙によると昨年には、「(著名な投資家で慈善家の)ジョージ・ソロスが毎日、(大型旅客機のボーイング)747を(オハイオ州)コロンバスまで飛ばし、黒人女性を乗せていってカリフォルニアで中絶させる」という持論を展開。これを防ぐため、連邦政府としての対応を求めた。この発言は猛烈な批判に晒された。

中絶に対する厳しい立場も、議論を呼んでいる。レイプや近親相姦の被害者に対しても中絶を認めないと主張しており、テレグラフ紙によると、こうした姿勢は共和党内の一部からも懸念を引き起こしている。

共和党の戦略家であるダグ・ヘイ氏は、フィナンシャル・タイムズ紙に対し、こうした言動を含め、「過去一週間の奇妙な問題の数々が党内での懸念を高めている」と明かした。

アンチ・トランプから一転

ヴァンス氏はかつて、「ネバートランプ」(トランプに絶対投票しない)派として知られていた。だが、トランプ氏の副大統領候補に指名された現在、その立場を180度転換した。

ヴァンス氏は2016年、トランプ氏が「嫌いだ」と述べ、「なんて馬鹿なんだ」とツイートしている。BBCによると、元ルームメイトで現在はジョージア州の上院議員であるジョシュ・マクラウリン氏に宛てたメッセージでは、「トランプはシニカルなアホか、あるいはアメリカのヒトラーだ」とのメッセージを送っていた。