時代劇のイメージだけだと試験で誤答する

それを読むと、三行半が再婚の許可だということ、妻の持参金や持ち込んだ家財道具はすべて妻側に返還すること、子どもの養育費や親権については仲人を仲介として協議して決めるのが一般的であることが述べられている。

さらに一部例外として、妻側にも離婚請求が法的に認められていたと、1741に発布された『律令要略』を引用して説明している。それは、夫が妻の衣類などを勝手に質入れした場合だ。

すでに2006年の大学センター入試にも離縁状に関する問題が出題されている。

江戸時代の農民の家や暮らしに関して述べた次の文X~Zについて、その正誤の組合せとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

 X 田畑の相続にあたって、分割相続が奨励された。
 Y 離縁状(三下り半)は、再婚を許可する役割も果たした。
 Z 信仰のための組織として、庚申講がつくられた

 ① X正 Y正 Z誤
 ② X正 Y誤 Z誤
 ③ X誤 Y正 Z正
 ④ X誤 Y誤 Z正

正解は③だ。

Xは「分割相続」という箇所が誤り。これは鎌倉時代の武士の相続方法だから。江戸時代の農民は大地主でない限り、次男以下に田畑を分割するのは法的に認められていない。

いずれにせよ時代劇の三行半のイメージを抱いていたら、不正解を選んでしまうことになるのだ。

バツイチは当たり前、女性も強かだった

残念ながら江戸時代の離婚率は、統計をとっていないので判然としない。けれど、思った以上に高かったと考えられている。とくに江戸市中は高かったようだ。

なぜなら女性は離婚しても次の相手に事欠かなかったからだ。男は単身の出稼ぎ者が多く、人口比も女性よりずっと高かったので、容易に再婚ができたのだ。バツイチは当たり前で、中には結婚と離婚を繰り返しているケースも見られた。

なんと、将来相手が嫌いになったら別れられるよう、結婚前に夫から離縁状を強要した例も判明している。さらに夫を恐喝して離縁状を書かせ、家を飛び出して愛人のもとへ走る妻もいた。離縁状をもらうため、わざと家事を怠けたり、金を湯水のように使い、精神的に夫を追い込む女もいたというから驚きである。