人民元安の中、国債に振り向けざるを得ない

不動産バブルの膨張により、住宅は最も安全、かつ高い利得を得る資金運用手段と妄信する中国の投資家は増えた。2019年の時点で、中国の家計金融資産に占める不動産の割合は約59%に達した。高い利得を目指して“影の銀行(シャドーバンク)”が設定した“理財商品(地方政府関連プロジェクトなど高利回りのローン債権を組み入れた投資信託)”に資金を振り向け、積極的にリスクをとる個人も増えた。

しかし、永久に不動産価格が上昇し続けることはない。中国政府の不動産向け融資規制である、3つのレッドラインをきっかけに不動産バブルは崩壊した。投資に依存した経済運営は難しくなった。金融緩和や不動産関連の規制緩和をしても、中国の景況感は悪化に歯止めがかからなかった。

7月、主要70都市のうち66都市で新築住宅価格は前月比で下落した。不動産市況が下げ止まる兆候は見出しづらい。本土株を売りに回る海外投資家は増え人民元の売り圧力も高まった。中国国内の個人や中小の金融機関は、国債に資金を振り向けざるを得ない状況に陥っている。

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農村商業銀行が「想定外の損失」に直面する恐れ

当局の警告にもかかわらず、個人や農村商業銀行による国債購入意欲は強い。8月26日時点で国債の利回り低下にブレーキはかからなかった。当面、金利低下圧力は高まるだろう。

世界の金利の歴史を振り返ると、ある程度金利が低下して過去最低水準を更新した後、利益確定の売りが出て金利が反発したことは多い。短期的に、中国でもそうした変化が起きる懸念はある。

問題は、農村商業銀行が想定外の損失に直面することだ。年初来、多くの農村商業銀行は、1カ月~5年の預金を集め、10年や30年の国債購入に資金を投じたとみられる。国内の需要停滞から銀行の貸出金利は低下基調だ。中国全体で商業銀行の利ざやは縮小傾向にある。もし、金利が上昇すると銀行の貸借対照表(バランスシート)の資産価額は減少するはずだ。