「牛乳余り」だったのに一転して「牛乳不足」になる理由

コメと同じように、政府の失敗によって需給が不安定化しているのが「酪農」だ。

コロナ禍で「牛乳余り」が叫ばれていたが、今度は反対に牛乳が不足傾向にあり、すでにバターは足りなくなっているという。

写真=iStock.com/naturalbox
「牛乳余り」だったのに一転して「牛乳不足」(※写真はイメージです)

昨年の猛暑で生乳の生産量が減ったのが原因と言われているが、それは一部でしかない。コメ同様、根本的な原因は「農政の失敗」にある。

政府は牛乳の過剰在庫を理由に、①酪農家には減産を要請し、②乳牛を処分したら一時金を支給するとして乳牛減らしを始め、③酪農家の赤字補填はせず、逆に、脱脂粉乳在庫減らしのためとして酪農家に重い負担金を拠出させ、④小売・加工業界も乳価引き上げを渋った。

これにより、酪農家の廃業が増え、生乳生産が減ってしまった。

国内農業をつぶして輸入を増やしている

コメ同様に、生乳の増産を奨励し、バター・脱脂粉乳の政府在庫を増やしていれば、その買い入れと放出で需給調整できたはずだ。

それをしないから、牛乳余りになったり、牛乳不足になったりするのだ。

結果、政府はバターなどの輸入を増やすことで対応し、余計に酪農家を苦しめることになっている。

農水省の2022年の「営農類型別経営統計」によると、酪農経営の営業利益は平均で約700万円の赤字となっている。特に、酪農業界を牽引し、経営規模を拡大してきた大規模酪農家の赤字がひどい。「搾乳牛飼養頭数200頭以上」の赤字は、平均で2200万円を超えている。

政府がやっているのは、国内農業をつぶして輸入を増やすという「逆行政策」にほかならない。