企業と地域の置かれた状況の違い

ブランド構築の要諦はこれ以外にもあろうが、最低限、こうした点を守りながら企業は商品ブランドを育成する。だが、地域においては、こうしたやり方でのブランド構築が果たして可能だろうか。たとえば、市や府県単位で考えてみても、難しい点が多い。いくつか列挙できる。

(1) 県が、ブランドづくりの音頭取りをするとしても、ブランド経営の主体になるわけではない。多くの場合、関連するメーカーやサービス業が集まって構成される集団がブランド経営主体になる
(2) そのブランド経営体において、投資資金は普通の場合非常に少ない
(3) 委員会制度が採用されるのが普通で、細部まで責任とそれに見合う権限・予算をもったブランドマネジャーはいない
(4) 多様なメンバーを構成員とするので、統一したアイデンティティを決めがたい

置かれた状況の違いを見てみると、企業におけるブランドづくりの要諦は、ことごとく覆されてしまう。無理矢理、企業と同様の要諦にしたがってブランドづくりを試みても、うまくいきそうもない。では、地域ブランドづくりというのは砂上の楼閣なのだろうか。そうではない。地域を大事に考える仲間が、地域にあるはずのさまざまな価値を集約して、それを訴えたいと思う気持ちに理がないわけはない。