マクロンの不人気が「国民連合」を躍進させた

「極右」とされるフランスの政党「国民連合」は、もともとジャン=マリー・ルペンが、フランス第一主義を掲げて、1972年に「国民戦線(FN)」という名で創立した政党である。ルペンは移民によって治安が悪化し、フランス文明が破壊されことを危惧していた。

2011年1月には、三女のマリーヌ・ルペンが第2代党首に就任し、党勢を拡大した。

2022年11月には、イタリア移民の子であり、28歳の若いジョルダン・バルデラが第3代党首に選出し、党のイメージチェンジを果たした。

また、政策的にも、過激な排外主義的主張を引っ込めて、ウクライナ支援への消極姿勢も棚上げし、EUとも融和的な方向に切り替え、多くの若者を引きつけたのである。

マクロンは、労働者の解雇を容易にしたり、年金支給開始年齢を62歳から64歳に引き上げたりして、国民に不評な改革を独断専行で行ってきたが、そのマクロン政権への反発が、RNへの投票となった。いわばマクロンの不人気が、RNを躍進させたと言えよう。

写真提供=David Niviere/ABACAPRESS.COM/共同通信イメージズ
マクロンの不人気が「国民連合」を躍進させた(写真はマクロン大統領、2024年8月2日)

三すくみ状態になってしまった

フランスの国民議会(定数577)選挙は2回投票制であり、第1回目の投票で、有効投票の過半数かつ登録有権者の4分の1以上の票を得た候補がいない場合には、決選投票が行われる。

決選投票に参加できるのは、登録有権者の8分の1以上を得た候補者であるが、この条件を満たす候補が誰もいないか、1人しかいない場合は、上位2者による決選投票となる。

第1回投票の結果、極右の国民戦線(RN)とそれに連携する勢力が33.2%で首位、左翼連合の「新人民戦線(NFP)」が28.0%、マクロンの与党連合が20.8%で3位であった。RNの得票数は1000万を超え、297選挙区でトップに立った。

1回目で当選したのは、RNが39人、左翼連合が32人、与党連合は4人で、501選挙区で7月7日に決選投票が行われた。

事前の世論調査(IFOP)によれば、決選投票での獲得議席予想は、RNが240〜270議席、与党連合が60〜90議席、左翼連合は180〜200議席であったが、結果はこれと大きく異なった。

1位が左翼連合で182(+33)議席、2位が与党連合で168(-82)議席、3位がRNで143(+55)議席となったのである。

与党連合も左翼連合もRNも過半数を獲得できず、三すくみ状態となった。