朝一番に来て雑用をし、夜は最後まで残って後輩を指導

その熱意を示すにはどうすればいいだろうか。単純なことだ。

僕は朝一番に来て誰よりも雑用をし、夜は一番最後まで残って後輩の指導をした。そして日中の空いた時間には必ず自分の業務と直接は関係ない手術を見学した。さらに、手術ではない仕事、学会発表や論文作成といった仕事も全力でやった。

その頃、僕はそういう仕事を人の3倍やろうと思っていたし、実際に3倍くらいやっていたと思う。

そのためには夜遅くまで病院のデスクでパソコンに向かったし、休日も遊びに行かずひとり病院にいたのだが。

かくして、僕は歴代の若手外科医で初めて、腹腔鏡の大きな手術を執刀させてもらった(もちろん、上司の指導のもとで、だ)。

中山祐次郎『医者の父が息子に綴る 人生の扉をひらく鍵』(あさま社)

一学年上の先輩がそれを聞きつけて、

「えっ、中山が執刀したの! なんでだよ!」

と医局で大声で叫んだほどだ。僕は、当然だ、とは思わなかったけど、自分の立てた戦略が合っていたし、戦略に沿った努力も十分な量だったと思った。

どんな仕事にも、こういう「超えなければならない壁」はあると思う。

壁を乗り越え、扉を開く鍵は、一人ひとりで違う形をしている。自分に合った鍵を手に入れるために、自分の頭で「自分に適した」戦略を考える。戦略が立ったらあとはがむしゃらに努力をする。これは、どんな仕事にも共通することだ。

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