来年の大河ドラマの予習に

第5位は白河小峰城(福島県白河市)。盛岡城(岩手県盛岡市)、会津若松城(福島県会津若松市)と並んで「東北の石造りの三名城」とされるが、なかでも白河小峰城の二段重ねの石垣は軍艦のようで壮観だ。

また、本丸には天守の代用だった三重御櫓が木造で復元されている。戊辰戦争の激しい戦いの舞台にもなったこの城の建造物は、明治維新の時期にみな失われたが、三重御櫓は複数の絵図のほか文献資料や発掘調査の結果をもとに、平成3年(1991)に伝統工法による木造で蘇った。天守など城郭建造物を木造で復元するブームの呼び水になった建築である。

白河小峰城、復元天守(写真=baku13/CC-BY-SA-2.1-JP/Wikimedia Commons

もう一つ、この城にいま注目すべきなのは、老中首座として寛政の改革を主導した松平定信の居城だったから。定信は来年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の重要人物。その城を「予習」しておくのも悪くない。

第4位には名古屋城(名古屋市中区)を挙げておく。天守の木造復元は大幅に遅れているが、平成30年(2018)に復元工事が完了した本丸御殿を鑑賞するだけでも、十分に価値がある。炎天下を避けて屋内で鑑賞できるのも、この夏向きだ。

昭和20年(1945)5月に焼夷弾を落とされ、天守とともに焼失した本丸御殿は、「近世城郭御殿の最高傑作」と呼ばれていた。訪れればその理由はわかる。将軍が上洛の途中で宿泊する特別な施設で、とりわけ3代将軍徳川家光のために増築された上洛殿は、贅が尽くされ最高の格式を誇る。

名古屋城本丸御殿(写真=Bariston/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

戦前の姿に近づいた名古屋城天守

旧本丸御殿を飾っていた襖絵や天井板絵は、空襲の直前に取り外されていて戦火を逃れた。また、取り外せない障壁画なども、多数の写真が残されていた。復元された御殿は、それらをもとに精密に復元模写された障壁画で飾られている。部屋ごとにテーマを変えて描き分けられたこれら絵画や装飾を楽しむだけでも満足できる。

また、昭和34年(1959)に外観復元された天守は、耐震性が不足しており中に入れないままだが、先ごろ最上階の窓ガラスの一部が白いパネルで覆われた。戦後の天守は眺望を確保するために、戦前の2倍の大きさの窓ガラスが付けられていたが、これで焼失前の姿に近づいた。ちょうど今夏からその姿を眺められるのである。

どんなに暑くても、やはり世界遺産の姫路城(兵庫県姫路市)は外せない。第3位に入れたい。大天守をはじめ8棟が国宝に、74棟が重要文化財に指定されている姫路城。石垣とその上に建てられた白亜の櫓や門、塀が重層的に折り重なり、その頂に3棟の小天守に囲まれた大天守がそびえる景観が、唯一無二の圧倒的な美しさをたたえている。

とくに古風な装飾がほどこされた菱の門から内側の内郭を歩くと、美しさの理由を解明できる。現在の姫路城は、慶長5年(1600)の関ヶ原合戦後に池田輝政が整備したものだが、その前には羽柴秀吉が築いた城があった。

写真=iStock.com/AndresGarciaM
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