高齢になったら大学病院より地域の町医者

では、良い医者、良い病院を探すにはどうすればいいのか――。

私は高齢になったら大学病院より地域の経験豊富な町医者にかかることをおすすめします。

大学病院では高度な専門治療が受けられ、あらゆる担当科がありますから、複数の病院をはしごする必要がなく便利です。大学病院を信頼し、通院している高齢者も少なくありませんが、高齢者にとって、大学病院がベストな選択とは言えません。

その理由は、本書で詳しくお話ししているように人間全体ではなく個別の臓器を専門に診る臓器別診療にあります。順天堂医院など、総合診療が充実している大学病院もありますが、ほとんどの場合、臓器別に専門分化されています。

中高年までの患者さんなら、臓器別の高度医療による治療は有効だと思います。実際、多くの難病患者さんたちが、専門性の高い臓器別診療のおかげで命をながらえてきましたから。

しかし、高齢者は一つの臓器だけでなく、複数の臓器にガタがきているのが普通です。

優先すべき治療を踏まえて、服用する薬の数を減らす

たとえば、高血圧でコレステロール値が高いうえに、軽い糖尿病も抱えているという人はめずらしくありません。

その場合、循環器内科で降圧剤やコレステロール値を下げる薬を処方され、内分泌・代謝内科では血糖値を下げる薬を出される。尿もれが頻繁に起きてくれば、泌尿器科で膀胱収縮を抑える薬が処方されるでしょう。

ところが、前述したように、高齢になればなるほど多剤服用による副作用のリスクが高まっていく。

臓器別診療は、薬の副作用や自分の専門外の臓器疾患なども見極めて、患者さんの健康を総合的に考える、という診療にはなりにくいのです。

高齢者の治療に必要なのは、「臓器は診れども人は診ず」という臓器別診療ではなく、「この人には5つの疾患があるけれど、腎機能や肝機能も低下しているだろうから、優先すべき治療を踏まえて、服用する薬の数を減らそう」といったように、患者さんの年齢や体調、臓器疾患を全部ひっくるめて診ることができる総合診療です。

高齢になったら大学病院より、身体全体の状態を把握してケアしてくれるような町医者で経験豊富な人に診てもらうほうが、よっぽど元気が保たれると思います。

写真=iStock.com/Nikada
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