「油外収益」を獲得できた店が生き残った

筆者は「既存顧客と既存商品を生かした新規事業の創造」にあると見ています。

石油メーカーはガソリンのスペックでの差別化を試みた時期もありますが、当然失敗しています。GS側ではガソリンの差別化は早々にあきらめ、ガソリン以外の商品の販売に力を注いできました。

具体的には、オイル、バッテリー、タイヤ等の整備商品から、洗車、コーティング、車検、中古車販売、さらには新車販売、レンタカーまで取扱い商品を拡大しています(業界では油以外の収益という意味からこれら商品群を「油外収益」と呼びます)。

油外収益を上げていくためには、カーディーラーや整備工場との競争となるため、高いスキルと営業力が求められます。これらのスキルを兼ね備えることができたGSは事業を成長発展させてきましたが、この競争についていけなかったGSは残念ながらガソリンの低マージン化の波をもろに受けてしまい、徹底を余儀なくされました。

現在でもこの流れは続いており、油外収益を上げられるか否かでGSの存続は決まっています。新規事業の創造は言うは易く行うは難し。たくさんの失敗を見てきました。その中で成功した新規事業は、図表2の2軸から生まれています。

筆者提供

縦軸に商品(上が新商品、下が既存商品)、横軸に顧客(左が既存顧客、右が新規顧客)を取ります。この時に、

①既存顧客に既存商品を売る が既存事業、

②既存顧客に新商品を売る
③既存商品を新規顧客に売る
④新商品を新規顧客に売る が新規事業となります。

GSでパンやたこ焼きを売っても失敗する

メディアで取り上げられやすいのは④。新商品を新規顧客に売る真新しく見えますから。ですが、かなりの確率でこの事業は失敗します。GSでは、パン屋、パスタ屋、たこ焼き屋、コンビニを新規事業として立ち上げましたが、すべて失敗に終わりました。

ノウハウのない新しい商品を自社に導入するだけでも大変なのに、並行して新しい顧客を見つけてこなければならず、そのためにはコストもかかります。結果、成功するまで時間と資金を投入し続けられなかったことが失敗の原因です。

それでは、どうすれば成功確率を高められるか。

それは、②既存顧客に新商品を売ることから始めることです。ビジネスで最もコストがかかるのが新規顧客の開拓です。そのコストを使う前に、目の前にいるお客さんが困っていそうなこと、欲しがっているものを見つけ、提供してあげることが最も成功確率の高い新規事業です。

これは地味ですが強力です。マクドナルドで「ポテトいかがですか」と言うのと同じです。GSではガソリン給油客に、洗車、コーティング、車検、買い替え時の中高車販売を提案し、事業化に成功しています。