青果だからこそ大手に対抗できる余地がある

アキダイの店舗数は現在9店舗(テナントも含む)。年商は約40億円。スーパーとしては決して大きなチェーンではないのだが、扱う商品が青果だからこそ、大手に対抗できる余地があると秋葉さんは言う。そして、ここでも重要になるのが、話し方、話術なのである。

たとえば、市場にピーマンが大量に入荷してきたとしよう。卸売業者としては早く売り切ってしまいたい。青果は短時間で傷んでしまうからだ。しかし、ピーマンばっかり大量に買ってくれる小売店など存在しない。つまり「悩み」の状態である。

「悩み」を抱えた売り子が秋葉さんに声をかけてくる。

「アキさん、ピーマンやってよ」

やってよとは、たくさん引き取ってほしいという意味だ。

ここで、雇われていた時代の秋葉さんなら、「×××円に負けるなら、やってやるよ」と言うところだろう。

「もちろん、こちらとしては『いくらに負けるの?』って値段を聞きたいですよね。でも、それを先に聞いてはいけないんです。他の市場の値段をこちらから先に持ち出すのもタブーです。向こうの方が安くしてくれるから向こうで買うよなんて言ったら、売り子は気分が悪いでしょう。仕入れで大切なのは、値段の交渉ではなくて、あくまでも人間関係なんです」

撮影=小野さやか
高校時代の得意科目は数学だった

売り子に対して「恩を売る」

では、どのように会話を運ぶのか?

「どこもピーマンで悩んでるっていうからさ、あんたのところも大変だろうと思って、他を全部断ってきたんだよ」
「ありがとうございます。他はいくらで出すって言ってましたか?」
「いいよいいよ、値段なんて。ところで何ケースあるの?」
「××ケースです」
「そりゃあ多いな。全部は無理だけど、うちがある程度数をやるから、値段頑張ってよ」
「わかりました。他はいくらって言ってました?」
「600円とか言ってたね」
「じゃあ、600円でいいですか? ありがとうございます」

他の市場の値段などチェックしていなくても、会話をうまくリードすることによって、秋葉さんは思い通りの値段で思い通りの分量仕入れてしまう。そればかりか、売り子に対してしっかりと恩を売るのだ。

なぜこんなことができるかといえば、前提が2つある。まず、大手のスーパーと違って市場で仕入れの量と値段を即決できること(大手は本部の許可がないと仕入れの内容を変更できない)、もうひとつは大量に仕入れた商品を売り切ってしまうノウハウをアキダイが持っていることである。