小規模店ならではの商売のやり方

「普通のスーパーは、『悩み』の時にものすごく安く仕入れることができたとしても、チマチマと儲けを乗せようとするから、結果的に売れ残りを出してしまうんです。でもうちは、安く仕入れたものは安く出して売り切ってしまう。それで翌日また市場に行って、『ピーマン、おかわりー』って、前日と同じ値段で仕入れちゃうわけ。これが、小規模店ならではの商売のやり方なんですよ」

秋葉さんは、入荷量の変動という青果特有の特徴と、小規模店ならではの機動力を生かしながら商売をしている。そこに、八百屋の醍醐味がある。

「安く買って、恩も売る」と言うと、アコギな商売をしているように思えるが、秋葉さんは、生産者を守るために品物を売り切らねばならないという市場関係者の使命感も深く理解している。だから、「悩み」の時こそなるべくたくさん買おうとするのだ。決して、相手の足元を見て買い叩いているわけではない。

同時に、アキダイの「売り切ってしまうパワー」も、値段だけに依拠しているわけではない。秋葉さんはどんなに安くても、味の悪いものは仕入れない。客は経験的にそれを知っているから、大量に仕入れても売り切ってしまうことができるのだ。

市場で好かれるのは「困った時に助けてくれる人」

「もう、人を育てる年齢になっちゃったから、市場の売り子には『悩みの友だち、もがきの他人はやめような』って、いつも言っているんです。そうすると、『そうですよね。もがきのときはアキさんに優先的に回しますから』って言ってくれる。市場で好かれるのはたくさんお金を使う人じゃなくて、困った時に助けてくれる人なんですよ」

こうして秋葉さんは、市場と持ちつ持たれつの信頼関係を維持することによって、店舗と従業員を守っているわけだが、過去に2度、痛恨の失敗をしたことがあるという。

特に1度目の失敗は、「話し方」が招いた禍いだったと言えなくもない。