アーティストも鑑賞者も「難問」を突きつけられている

日常的なありふれたものを複製したり、再構成したりすることで「芸術の唯一性(アウラ)」を否定しているのです。これは、既製品を表現の素材とする手法「レディ・メイド」と呼ばれ、マルセル・デュシャンの代表作『泉』やアンディ・ウォーホルの『キャンベルスープ缶』の直系の子孫ともいえる立ち位置です。芸術を大衆化するという考え方は、みな同じです。

しかし、作品が高額だからといって、偉大な芸術作品というわけでもありません。現実の虚構性を浮かび上がらせているようにも見えます。著作権侵害訴訟が世界中で繰り返され、炎上する度に有名になり、価格がつり上がっていくという奇妙な構造も、ジェフ・クーンズらしい表現です。

物質社会を風刺するパロディーなのか、ゴシップ様式のアートなのか、それとも崇高な現代美術なのか。アーティストも鑑賞者も社会の常識やルール、スノビズム(俗物主義)とどう向き合っていくべきなのか、という難問を突きつけられているのです。

Point
作品が高額だから偉大な芸術作品とはいえない。スノビズムとどう付き合うかが問われている。
関連記事
30人に1人しか合格しない…競争倍率日本一「東京藝大 油絵科」の信じられないほどシンプルな入試問題
「お母さん、ヒグマが私を食べている!」と電話で実況…人を襲わない熊が19歳女性をむさぼり食った恐ろしい理由
君は僕より売れてないよね…超難関「東京藝大」の卒業生が直面する「芸術でメシを食う」という困難
「なぜ生物は死ぬのか」という問いは間違い…生物学者の東京大学教授「死ぬものだけが今存在している」深い理由
松田聖子を途中下車させ、駅のホームで歌わせる…「ザ・ベストテン」を伝説の番組にした演出家の異常なこだわり