植物と動物の違い

野菜にはものすごいパワーがあります。その源泉は、植物の生存戦略にあります。植物は動物と違って、逃げも隠れもできません。有害な紫外線や、土中の病原菌、害獣や害虫から、自分の力で身を守らなければならない。そのために植物は、紫外線による酸化の防止、殺菌や解毒、害虫の駆除などに役立つさまざまな成分を、自ら生み出しています。

私たちは野菜を食べることによって、そうした有益な成分を体内に摂り入れているのです。

また、そうした成分の中には、薬に転用できるものもたくさんあります。私たちが現在、使用している薬剤の七割以上は、植物由来であるか、もしくは植物にヒントを得ているものと言われています。

そうした事実に触れれば触れるほど、そしてその背後にある、生物としての野菜の持つ実に精妙なメカニズムについて知れば知るほど、「人は野菜を食べるべきなのだ」ということが心の底から納得できるようになります。

皆さんには、野菜をめぐるその謎解きにぜひおつきあいいただきたいのです。

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「元気が出ない」人は黄信号

野菜を食べることは、とても重要です。

最近、内科医として勤める中で気にかかっていることがあります。

「なぜか疲れやすい」「元気が出ない」と訴えていながら、原因がはっきりしない患者さんが多いのです。こうした人々の中には、実は壊血病や脚気の予備軍が含まれているのではないかと私は疑っています。

壊血病はビタミンCの、脚気はビタミンB1の欠乏が原因で発症する病気です。どちらも放置すれば死に至ることもある恐ろしい病ですが、発症する原因もはっきりわかっており、新鮮な野菜や果物も豊富に手に入るようになった現代では、ほぼ根絶されたと考えられていました。しかし壊血病の発症事例は今もって、しかも先進国でも報告されています。そして「元気が出ない」といった状態は、それらの病気の初期症状である可能性もあるのです。