1999年から変わらない「商品の顔」

食品や日用品の世界では「思い出してもらえるブランドは強い」とも言われる。そこで各社は商品開発からマーケティング、販売促進に至るまでさまざまな工夫を行う。

筆者の手元にある「健康ミネラルむぎ茶」(650ミリリットル)の商品パッケージにあるのは、“発売からずっとやかん品質”の文字とイラスト。さらに目立つのが「ギネス世界記録認定 麦茶飲料販売実績 日本、世界、No.1」表示の横でほほ笑む、笑福亭鶴瓶氏(落語家)の存在だ。

画像提供=伊藤園
伊藤園のむぎ茶の顔として認知されている鶴瓶さん。

NHKの長寿番組「鶴瓶の家族に乾杯」などで知られる鶴瓶氏は、ブランドキャラクターとして健康ミネラルむぎ茶のテレビCMや広告・POPにずっと登場し続けている。

「1999年から変わらずご出演いただき、今年で25年になります。もし小売店で商品名を忘れても、“鶴瓶さんの麦茶”といえば、健康ミネラルむぎ茶を出してくださるほど浸透しています」(黒岡さん)

CMや広告に露出するブランドキャラクターは長年出演するほど、見た人の印象に残る。「ハウス バーモントカレー」(ハウス食品)なら、今でも西城秀樹氏(歌手)の「ヒデキ! 感激‼」のフレーズとともに覚えている人は多い。「リポビタン」(大正製薬)はケイン・コスギ氏(俳優)のイメージだろう。これも「思い出してもらえる」訴求だ。

ここ数年で変化した味わい

前身商品の発売から36年。この間に製法も少しずつ変えてきた。

特に、近年の麦茶市場の拡大を受けて、消費者から「もっと甘みもほしい」という声が多く寄せられたという。これをきっかけに、2016年から製法の見直しに着手した。

「それまでは六条大麦をメインに使用していました。たんぱく質を多く含み、焙煎するとそれが焼けて香ばしくなります。これに、でんぷん質が多く、焙煎すると甘みを出すことができる二条大麦(麦芽)を加えたのです。

2種類の麦の配合比率を調整し続け、それぞれの麦の焙煎方法も工夫しました。素材由来の“甘くて香ばしい味”を出すため、ラボ(実験装置)レベルではうまくいっても、本格生産となる商品の均一性・均質性が実現するまで試行錯誤を続けました」(黒岡さん)

そうして誕生したものが現在流通している商品だ。

「原料の大麦はカナダ、オーストラリア、日本、アメリカから調達していますが、伊藤園の麦茶は、麦の買い付けから焙煎まで自社グループで担うのも特徴です」(同)

同社が販売するペットボトルとティーバッグの麦茶では、少し味わいも違う。

「ティーバッグでは簡単に抽出できるよう粉砕した麦の粒を使いますが、ペットボトルでは丸粒の麦を使います。“やかん品質”の麦茶を再現した味わいにしているのです」(同)