「わが社ならではの得意分野」は何か

とりわけ重要なのは、自社の“コア・コンピタンス”を見極めること。

技術力、顧客基盤、ブランド、企業文化など、他社には真似できない自分たちならではの価値は何か。そしてその強みを、いかに時代のニーズに合わせて進化させ、ビジネスに活かしていくか。

スタジオジブリのように、世界に誇る品質と創造性を武器に、市場での価値を高めていく。あるいは、特定の分野で圧倒的な専門性を発揮し、ニッチな市場で存在感を示す。規模の大小に関わらず、勝ち残る企業はこうした「オンリーワン」を実践しているはずです。

そしてその先にあるのが、志を同じくする企業との連携です。

同業他社との差別化を図りつつ、「企業の個性」を発揮し合える新たな事業領域を切り拓いていく。Win-Winの関係を築きながら、互いの強みを掛け合わせて、シナジーを生み出す。

日テレとジブリが示したのは、そうした企業同士の化学反応が、新しい価値を生み出すということ。異なる得意分野を持つ者同士だからこそ、単独では成し得ない成果を生み出せるのです。

「身売り」ではなく「共存共栄」を目指す

また、M&Aや資本提携は、事業承継の有力な選択肢にもなります。

日本の中小企業の多くは、後継者不在に悩まされています。創業家の高齢化が進む中で、技術やノウハウを次の世代に引き継ぐことは「緊急ではないが、重要な課題」です。その点、信頼できるパートナーと手を組み、経営基盤を安定化させることは、企業の存続に不可欠な戦略と言えるでしょう。

もちろん、それは単なる「身売り」を意味するものではありません。

松丸史郎『元銀行員×経営者が教える 幸せになるための事業承継とM&A』(クロスメディア・パブリッシング)

大切なのは、パートナーとの間に信頼関係を築き、互いの企業文化を尊重し合いながら、共に成長を目指すこと。

「らしさ」を失わずに、しなやかに変化していく。日テレとジブリの提携は、まさにそのあり方を体現したと言えるのではないでしょうか。

激動の時代を勝ち抜くためには、自分たちの強みを再認識し、志を同じくする者と手を携えていくことが何より重要です。

変化を恐れるのではなく、変化を力に変えていく。そんな企業こそが、これからの時代を生き抜いていけるはずです。

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