自分の感情にふたをしてしまっている

私が行っているコミュニケーション研修には、「喜怒哀楽」の4つの感情ごとに、最近の出来事を書いてもらうワークがあります。

大野萌子『ネガティブな自分のゆるし方』(クロスメディア・パブリッシング)

この研修を続けていく中で気づいたのは、長く自分の感情にふたをしてしまっている人ほど、ワークの記入ができないということです。

その理由は明確で、自分の感情に向き合わず、見て見ぬふりをし続けてしまっていたからです。

また、20〜40代にカウンセリングをしていると、「仕事が嫌い」「上司が嫌」「なんとなくモヤモヤ、イライラする」とはいうものの、具体的にどんな気持ちなのか、自分はどうしたいのかを聞くと、「自分でもよくわからない」という人が多くいます。

変化の激しい社会を生きる私たちは、無意識に心に鎧をまとい、自分の弱さを周りに見せないようにしてしまいがちです。

この「自分の悪い部分、恥ずかしく醜い部分を見られたくない」という思いが強くなりすぎると、自分の感情を抑え込んでしまい、その反動として最近では、SNSに本心と違うことを発言してしまうケースにつながっているのです。

特に、「我慢強くてまじめな人」「自分よりも他人を優先してしまう人」がこのパターンに陥りやすい印象があります。

こうして、私たちは自分の本当の感情は何かを見失ってしまうのです。

「今どんな気持ちなのだろう」と問いかける

私もカウンセリングの勉強を始めた頃は、相談者さんの気持ちと自分の感情が混ざってしまい、カウンセリング中に自分の感情を見失うことがありました。

相談者さんが悲しい話をしていると自分も悲しくなる、怖い話をしていると自分も恐ろしくなるといったように、感情が引っ張られてしまうのです。

そこで私が訓練したのが、自分の感情を確認することでした。

カウンセリング中に「今は嫌な気持ちになっている」「話を聞いて恐怖を感じている」など、自分の感情を客観的に認めることで、相手の感情と分離ができるようになったのです。「自分の感情を認める」ことは、カウンセリングにおいても基本中の基本の考え方です。

自分の気持ちがよくわからないという人は、ネガティブ感情の克服、心のリカバリーに少し時間がかかるかもしれません。そんな人は、なんとなく嫌な気持ちになったときに、立ち止まって「今どんな気持ちなのだろう」と心に問いかけてみてください。

もし考えてみても、自分の感情がわからないという人は、それでも大丈夫です。

どんな感情が浮かんだとしても捨て去ろうとせず、ありのままの感情を受け止めていきましょう。

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