保険適用で3割負担なら年間90万円
Q.レカネマブの治療にはいくらかかりますか?
レカネマブ1瓶(500ミリグラム)の薬価(薬の公定価格)は11万4443円です。
厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会が2023年12月13日に決めました。
体重1キログラム当たり10ミリグラムを1回の投与で使います。したがって体重50キログラムの人の場合、1回の投与で500ミリグラム。これを2週間に1回点滴で投与するので、1人当たり1年に約300万円の治療費がかかる計算です(投与の期間は原則的に1年半)。
レカネマブは公的医療保険の適用対象なので、患者さんの自己負担額は医療費の1~3割です。自己負担割合は年齢や収入によって異なりますが、3割の人なら1年に約90万円、2割の人なら60万円、1割の人なら30万円です。
医療費の負担額が1カ月(月のはじめから終わりまで)で一定額を超えた場合にその超過分が支給される「高額療養費制度」もあります。こちらも年齢や収入によって自己負担限度額が異なりますが、後で払い戻されるので、しっかり確認しましょう。
健康な生活が「0.91年」延びる
レカネマブは他の抗認知症薬と比べて安くはありませんが、その費用対効果はどのくらいあるのでしょうか。治験で得られたデータや疫学データなどを用いて割り出したレカネマブの価値を検討した論文を紹介しましょう。
認知症が進行すると、患者さんにさまざまなコストがかかります。病院への通院、入院、介護・在宅医療サービスを受けるなどの直接的な経済的コストだけではありません。働き盛りの介護離職が社会問題になっていますが、家族の経済的、精神的なコストもあります。
論文によれば、レカネマブの治療を受けることにより、健康な生活が0.91年延長するといいます。そして、日本人の場合、この0.91年(約1年間)は193万円~467万円の社会的価値に相当すると試算しています。
ここでレカネマブの薬価を思い出してください。体重50キログラムの人で年間約300万円でした。先の論文が見積もったレカネマブの社会的価値に収まります。
したがって、この論文からはレカネマブの薬価は妥当なものだと考えられています。一方、最近のアメリカの研究では、厳格に計算し、レカネマブは年間78万円未満で費用対効果に見合うとしています。費用対効果の解釈にはさまざまな角度からの、さらなる研究が必要です。