アミロイドβが蓄積されていないと意味がない
認知機能検査で適応となることが確認された場合は、次に頭部MRI(磁気共鳴画像)検査となります。MRIで脳に1cmより大きい出血の跡がある場合、5カ所以上のごく少量の出血(微小出血)の跡がある場合は投与できません。レカネマブの副作用として脳出血や脳浮腫(脳の血管の周りに水が溜まること)があるからです。
そして最後に、アルツハイマー病の原因であるアミロイドβの蓄積があるかないかを確認するため、脳脊髄液検査またはアミロイドPET検査を受けていただきます。レカネマブはアミロイドβに結合して、これを取り除く作用を持っています。したがって、アミロイドβの蓄積がないのにレカネマブを投与しても意味がありません。
脳脊髄液検査、アミロイドPET検査のどちらを受けるかについては、主治医との相談が必要です。MMSE、CDR、MRIの検査結果条件を満たし、さらにアミロイドβの蓄積が陽性であれば、レカネマブによる治療の適応となります。
レカネマブと従来の抗認知症薬の違い
なお、アルツハイマー病の発症リスクを高める遺伝子、アポリポタンパク質E(ApoE)の遺伝子検査は必須ではありませんが、主治医と相談の上、希望すれば採血で測定することが可能です。この点については後で説明します。
レカネマブは、ドネペジル(商品名アリセプト®)やメマンチン(商品名メマリー®)など、従来の抗認知症薬とはまったく異なるタイプのアルツハイマー病治療薬です。
アルツハイマー病では神経細胞がダメージを受けます。レカネマブは、神経細胞へのダメージを引き起こす原因そのものを取り除こうとするものです。一方、従来の抗認知症薬には、まだダメージを受けていない神経細胞の働きを強める効果はありますが、神経細胞へのダメージを止める力はありません。
レカネマブが開発された経緯を含めて、その効果については本書の第2章で詳しく解説していますが、ここではポイントを述べます。