「休めるだけ休む」も良いが、リスクがある

そもそも、軽度なメンタル不調であれば、治療しながら業務を軽減して就業継続する、それも難しい場合に休職する、という選択肢があるため、すぐに退職など考えなくてもよいはずで、職場としっかり協議し、合理的配慮をしてもらうことで解決するケースが大多数です。

しかし、「退職します、一切連絡をしないでください」と退職代行業者を通じて連絡をしてしまうと、そのようなステップを踏むことがないまま退職になってしまいます。果たして、その退職方法で、今後の社会人生活において「よりよい社会参画」を続けられるのでしょうか。

例えば、公務員や財閥系大企業ですと、最長3年程度の休職が可能な場合も珍しくありません。重篤な状態であればそれくらいの休職期間を要すこともありますが、必要以上に長く休職しているケースも散見されます。

もし社員側の希望で安直に休職の道を選んでしまった場合、人事としては復職後の扱いに悩むことになります。往々にして、社内の花形部署での業務はキャリアアップに繋がる反面、相応の負荷がかかることから、メンタル休職歴のある社員を配属することは、長期にわたり避けられる傾向にあるのです。安易な休職は、キャリア形成においても、非常に不利となる可能性があるのです。

カジュアルに退職した社員は採用されるか

さらに、退職代行業者を利用して「カジュアル」に退職した場合はどうでしょう。短期間で転職を繰り返していると、転職希望先の入社面接で「うちの会社もすぐ辞めるのかな」と面接官から思われることは避けられません。「業務で長期的な人間関係を築くことができない人」という第一印象を与えかねないのです。

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さらに「退職代行業者を使って辞めた社員」を、人事担当者は強烈な印象をもって記憶しているでしょう。業者を使って辞めた経験がある人に対しては「また業者を使って一方的に辞めるかもしれない」と思われます。

人事担当者は会社が違っていても交流会等でつながっているケースがありますので、そのような手段で退職した事実が他社に全く伝わらないともいい切れません。社会は人間同士の営みですから、SNSと同じように「クリック一つですべて遮断、今後一切関係しない」はありえないはずです。