退職代行業者とメンタルクリニックがタッグ?

プレジデントオンラインに寄稿した〈なぜメンタル休職する若手が増えたのか…本人が損する“安易な休職”を勧める「診断書即日発行クリニック」の罪〉でも言及しましたが、最近、メンタル不調による「休職診断書」が、適切な診断と判断により発行されているとは思えない事例に、少なからず遭遇します。

本来、休職診断書は「ドクターストップ」であり、非常に重いものです。しかし、近年「休職したい」という患者の申し出を、そのまま受け取って発行しているだけと思われる「カジュアル休職診断書」が乱発されているように感じます。

さらに申し上げると、この「カジュアル休職診断書」の裏には、私がかつて提携を持ちかけられたように、退職代行業者とメンタルクリニックがタッグを組んでいるケースがあるかもしれないのです。

医師の診断書に対して会社は反論することが難しく、従うしかありません。それくらい診断書は強い影響力を持つものです。その力を逆手にとって、退職代行業者に助言されるがまま、退職を前提として「メンタル不調の診断書をください」という社員もいることでしょう。

前述したように、この患者が重症のうつ病等に罹患しているケースや、勤務先の会社にパワハラやモラハラなど重大な問題がある場合は、退職代行業者のような第三者が介入した方が望ましい場合もあります。

患者が言うがまま診断書を発行する医師

しかし、私がメンタルクリニックで診察している患者さんの典型像は、症状が比較的軽症な段階で、良くも悪くも「カジュアル」な受診が増えています。症状の程度によっては必ずしも休職や退職は必要ではなく、多くは通院しながら仕事を続けることが十分可能です。

環境の見直しや睡眠薬や抗不安薬を試してみて、休養を十分確保できるようになれば日中にクリアな頭で仕事に取りかかれたり、ネガティブ思考を払拭できてメンタル不調が改善するケースも多いのです。

退職代行業者と提携しているクリニックがどの程度存在するかは把握が困難ですが、おそらく彼らには社員の治療や職場への適応を支援する意思も能力もなく、社員の希望する長期休養や、メンタル不調退職を口添えするための診断書作成に専念している、と判断せざるを得ないケースも多々あるのです。

さらに、そのようなメンタルクリニックの多くは「診断書即日発行」を謳っており、患者さんが初診で訪れたその日に、診断や精神状態をしっかり見極めず、言われるがまま診断書を発行しているという点に、疑いの余地はないでしょう。