実にうまくできた地方創生支援政策

ふるさと納税は菅義偉前総理最大の貢献だと評価されています。そのココロは地方の名産品がふるさと納税の仕組みのおかげでたくさん売れるようになったことです。

それまで地方創生をうたいながら、地方の産業を潤すことはなかなかに難しいことでした。その難題がふるさと納税で一気に解決します。人気の黒毛和牛もそうですが、地方名産のフルーツ、日本酒、スイーツ、工芸品などそれまで知られていなかった隠れた名産品がふるさと納税をきっかけに掘り起こされ、消費されるようになりました。つまりふるさと納税の実態は官製通販による地方名産品の販売支援にあったのです。

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結局、ふるさと納税で地元に落ちるお金は、寄付金の4割だけではなく、返礼品の仕入れ値を加えた7割程度。さらにこれらの地方名産品のファンが生まれるので、ふるさと納税とは別に追加注文も生まれて地元にはさらにお金が落ちる。そう考えるとこの制度は実にうまくできた地方創生支援政策なのです。

さて、ここで総務省が問題視をしているのが、仲介サイトが発行するポイントです。冒頭で紹介した、わたしが5万4000円の寄付で得た1万590円分のPayPayポイントはどこから出たのでしょうか?

顧客獲得のためにポイント還元競争をしている

計算してみるとわかりますが、このポイントの還元率は19.6%です。ようするにこの日、さとふるでは自治体から受け取るであろう手数料の大半を利用者に還元するキャンペーンを行っていたのです。

なんのためにそんなことをするのかというと、サイトの宣伝のためです。いまふるさと納税では20を超えるサイトが乱立して顧客の奪い合いをしています。業界の状況としては推定で上位4サイトが市場シェアの3分の2程度を占める寡占状態になっています。調査によっても推定順位は変わりますが、老舗のふるさとチョイスが業界トップ、楽天が2位、さとふるが3位でふるなびが4位、というのが直近の状況に近いのではないでしょうか。

これらのサイトがお互いに顧客を奪い合うために熾烈な競争、直接的にはポイント還元競争をしていて、チャレンジャーなサイトほど高いポイント還元で順位向上を目指しているのです。

このことを総務省が問題にした当日、多くのニュース番組の画面に映されたのはふるなびのメガ還元祭の「最大50%還元」の文字でした。それを見て、

「えっ、50%もポイント(ふるなびの場合は呼び方はコイン)が還元されるの?」

と思ったかもしれませんが、これは実はミスリードです。

7月末までのこのキャンペーン期間のあいだで参加者が確実にもらえるのは16%(寄付金2万円以下の場合)だけです。それが最大で50%になるのは抽選で1等が当たった人です。

それでも16%還元されるというのは、ふるなびから見れば自治体から受け取る手数料のかなりの部分をメガ還元祭の間は利用者に還元して、シェアを上げようという試みです。