ポイント還元を禁止しても利用料は下がらない

一方で総務省の目論見としては、ポイント還元がなくなればサイト利用料も20%も必要なくなって下がっていくことを期待しているのだと思いますが、そうなるでしょうか?

わたしはこの手のインターネットのポータルビジネスのコンサルティングを長年してきたのでわかりますが、ポータルを運営するには実はこれくらい(ふるさと納税の場合は20%ぐらい)のコストは普通にかかります。

以前、国立科学博物館がクラウドファンディングで資金調達をしたところ大成功したのですが、仲介サイトの手数料が2割かかるということが社会問題になりかけたことがありました。このときも「それくらい仲介サイトにはお金がかかる」ということがわかって世論は沈静化します。

今はふるさと納税市場は拡大時期なので、各ポータルサイトはシェアを拡大するために利益を犠牲にしてポイント還元に投資をしています。その競争がなくなれば各事業者は投資をする理由がなくなりますから、普通に利益を追求するようになります。ですからポイント還元を禁止したからといって、各サイトが自治体に対する利用料を値下げするというのは自由競争的には考えにくいことです。

「昔のやり方」に戻したら今のサイクルは途切れる

ただひょっとすると総務省は仲介サイトなどいらなくて、利用者がそれぞれ縁のある地元の自治体に寄付をする昔のやり方に戻るのがいいのだと考えているかもしれません。それだと利用者が通販のように地方の特産品を検索して、(実質的には寄付が目的ではなく)購入することで地元経済が発展するという、今起きているサイクルは途切れてしまいます。

日本地図の自然
写真=iStock.com/takasuu
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結局のところ地元の利益のためには仲介するふるさと納税サイトはあったほうがいい。そして業界が成熟した段階ではやはり20%程度の手数料はサイトの運営のためには必要です。総務省のポイント還元禁止令は、自治体が受け取る寄付金額を増やす効果はなくて、仲介サイトの業界順位を固定する結果を生みそうです。

「そうならないように総務省が今度は“自治体が仲介サイトに支払うお金は10%を上限とする”と通達を出せばいいんじゃないか?」

と思うかもしれません。自治体が受け取る金額は増えますが、これをやると5位以下のサイトが立ち行かなくなって廃業します。上位のサイトはあまりコストを使わないように運営を続けるでしょう。つまり業界寡占度はさらに高まり、サービスレベルは低下します。

つまり今回の総務省の告示は無理筋な政策に思えます。ここで面白いのが、この政策で得をするのは楽天で、損をするのがソフトバンク系列のさとふるなど、より下位のサイトだという点です。