「独立系書店」の動き

書店にも動きはある。2015年に開業した誠光社(京都)は、定価の70%で本を直接卸してほしいと、準備段階から出版社に要請して回った。対応はさまざまだったが、継続可能な書店の方法を追求しようとする誠光社に刺激を受けている関係者は多い。

トランスビューの登場から20年以上、誠光社の開業から来年で10年になる。いまも彼らの方法は主流ではなく、書店業全体において理由①は改善されていない。

だが、大手取次と取引がなく、JPOのデータベースにカウントされない小さな書店が、この10年で続々と開業した。よく“独立系書店”と呼ばれる、小さな店たちである。

「子どもの文化普及協会」など小口の注文に対応する出版卸業者がいくつかあり、トランスビューなども合わせると、かなりの新刊書を揃えられるようになったことが大きい。JPOは、いまはそうした店の情報収集にも取り組んでいる。

出版流通の全体が一斉に変わることは、とても難しい。まだ当面は、自分はこのようにやる、という個々の営為が、新たに書店を始める人たち、現状を打開したい人たちのヒントになるだろう。それがいつか、理由①の解決につながっていくかもしれない。

理由②は、技術の進化と人びとの生活の便利さの話であって、理由①より強大である。

電車のなかで雑誌や新聞を広げる人を見なくなったが、8割の人がスマホに目を落とすなか、たまに紙の書籍を読んでいる人がいる。

熱心に頁を繰る姿を見ていると、皆が同じことをしているとき、あるいはさせられているとき、違うことをしている人が1人くらい(できれば、もう1人か2人くらい)いることは、大切だと思う。

写真=iStock.com/maroke
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そのためには、本を渡す本屋が必要だ。本屋はマイノリティ向けの商売になっていくという意味ではない。他の誰とも違う自分である時間は、誰にでもある。

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