わざわざ近所のコンビニで週刊文春を買ってきた

いつまでも雑誌を売る書店のほうが悪いという声もあるだろう。JPOまとめの「閉店」のなかには、雑誌依存の売場構成を変えられなかった店も多いはずだ。近年に開業した小さな書店は書籍が中心で、「dマガジン」でも読めるような雑誌は扱わないところが多い。

ただ、本屋には本屋の理由わけがあるようだ。

「いつも『週刊文春』を買っていくお婆さんがいるんだけど、この前、その人が来る前に売り切れちゃって、近所のコンビニで買ってきました。お婆ちゃんにとっては、週に1度ウチに来ることが生活のリズムになっている。そこは付き合いたいんだよ」

雑誌名やシチュエーションは違っても、似た話を聞くことは多い。数こそ減ったが、毎週、毎月、書店で雑誌を買う人はいまもいる。1人ひとりが求める1冊を用意することを大切にしている本屋は多く、それはこの商いの根幹なのだと思う。

紙版と同じレイアウトの電子雑誌。それでも雑誌を並べる本屋。書店の経営が困難になった背景には、そんな小さな理由がいくつも重なっている。

解決は不可能なのか?

出版社と書店の直取引

大きな理由の①「利益率が低い」は、もう何十年も議論されている問題である。

現行の21~23%という粗利益率も、そもそも半世紀前に書店組合がストライキを起こして出版業界に訴え、10%台後半だったものを引き上げた結果だ。

それでも、家賃、人件費、光熱費をはじめとした経費を引けば赤字に陥ってしまう状況はつづき、さらに理由②の時代がやって来た。書店組合は、多くの小売業に近い「粗利30%」をたびたび主張してきたが、話が大きく進展したことはない。

ただ個別の動きを見ると、状況を正面から変えようとする人たちはいたし、実を結んでいるケースもある。

出版社のトランスビューは、2001年の創業から書店との直取引をメインにした。書店にまっとうな利益を保証することが継続的な取引につながると考え、取次会社を使わず、定価の70%(書店の粗利益率は30%)で直接発送することを基本とした。2007年からは、一定のペースで注文をくれる書店には68%(同32%)と、さらに安くした。

書店と直接取引をする出版社はトランスビュー以前からいくつもあるが、他との違いは、それが波及したことだ。トランスビューにやり方をならって創業する出版社が登場し、トランスビュー自身も、2013年から新興出版社などの書店との取引を代行する事業を始めた。10年を経た現在は150社ほどが利用している。