年金の支給額が減ってしまうのは再就職など「給与所得」の人

これに対し、個人事業主になると、その所得は事業所得または雑所得になるのでいくら稼いでも年金は全額もらえる。給与所得者のように自分の収入を調整する必要はなくなる。

これを知っている人はあまりいないが、個人事業主になる大きなメリットだ。

個人事業主になるには個人事業の開業届を開業から1カ月以内に納税地の税務署に提出すればよい。個人事業の開業届には開業日、事業の種類などを記入すればよいだけなので手続き的には簡単だ。これで無事、個人事業主になることができるが、その後開業の翌年の2月16日から3月15日までに納税地の税務署に個人事業主としての確定申告書を提出する必要がある。これは毎年行う必要があるので、確定申告をしたことのない人はそのやり方を覚える必要がある。

年金を全額もらえるだけでなく、個人事業主になると有利

個人事業主になって以下の①、②の条件を満たすとそれ以外にも税務上のメリットを受けることができるので、そこまでやることをお勧めする。

①事業所得として認定されること

個人事業主になるのであれば、雑所得でなく事業所得として認定された方が年金所得との「損益通算」ができるのでさらに有利になる。

「損益通算」とは何だろうか? 年金所得は常に黒字だが事業所得は赤字になることがある。

例えば起業直後、事務所を借りたり、パソコンや備品などを購入して、それらの費用に50万円かかったとする。一方売上は年10万円だった場合、事業所得は40万円の赤字になる。仮に年金所得が130万円とすれば、損益通算によって全体の所得は90万円に減少し40万円相当分の税金が節約できる。図表2参照。

筆者作成

損益通算による課税所得減:40万円、所得税率:10%、住民税率:10%とした場合の節税額は40万円×(10%+10%)=8万円となる。