「本を売る」だけでは生き残れない

列に並ぶお客様へお詫びに伺うと、「有隣堂の新しい挑戦なんだから応援します!」と言って、ただただひたすらに並んでくださった。私だけではなく、多くのスタッフも涙が止まらなかった。

新しい挑戦をした時、それを支えてくれる「ファン」の方々の存在は極めて大きい。日頃から、地道にお客様に奉仕し、お客様にどうやって楽しんでいただくか、どうやって新しい体験をしていただくかを考え続けること以外、ファン獲得は難しい。多くのお客様に「ファン」になっていただく地道な活動は、実はイノベーションや改革の大きなエンジンになると信じている。

小島俊一『2028年 街から書店が消える日 本屋再生!識者30人からのメッセージ』(プレジデント社)

経営者の健全な危機意識と熱意。そして優秀な若い人材とファン顧客。これだけ揃えばあとは行動を起こすだけだ。

イノベーションや新しい挑戦には、もちろんリスクが伴う。「千三つ」ではないけれど、打つ手全てが百発百中で成功する、ということはあり得ない。一定の失敗を前提とする以上、攻めだけでなく、守りの観点も無視はできない。それでも挑戦を躊躇した先に私たちの明るい未来はない。

今後、多くの書店がイノベーションを起こし、今までにない新たな書店が数多く誕生し、健全で前向きな切磋琢磨が行われることを期待しつつ、同時に、自らへ今一度むちを入れ直していきたいと思う。

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