体調の変化に悩む女性のため「あきらめない」

「会社の期待を裏切り、大きな損害を与えてしまったことに責任を感じて、直属の上司の内山は辞職を覚悟していました。しかし当時の役員に“会社に与えたダメージに対して、辞めることでは責任を取ることにならない、もっと良い製品を開発して利益を上げるべきだ”と諭され、一緒に動いていた私自身も辞めるつもりでいましたが、あきらめてはいけないと、俄然やる気がわきました」

以来、6年間苦楽をともにしてきた上司と部下は、役員の言葉に奮起し、大豆イソフラボンに関連する別の成分での再起を申し出た。

その成分とは、「エクオール」という大豆イソフラボンの代謝物で、女性の健康に密接な関わりがあることがそれまでの研究をとおしてわかっていた。エクオールは豆腐などの大豆製品を摂ると腸内細菌により体内で産出される女性のパワーの源である。だが、エクオールを産出する腸内細菌を持っている人は日本女性では約5割。半分の人が大豆イソフラボンを摂取してもつくれないため、その成分を補えるとされるサプリメントへの潜在ニーズは高いと踏んだ。

「私はこの研究をあきらめたくなかった。その当時、世間ではまだライフステージにおける女性の心身の変化に注目が集まらず、がまんすることがあたり前となっていました。しかし女性特有の健康課題で悩む女性は少なくありません。

健康だからこそ起こる身体、体調の変化があり、月ごとの変化のほか、さまざまなライフステージごとの変化を経験します。しかし誰にも相談できなかったり、がまんをしたり、対処をあきらめてしまっているケースも多いのです」

医薬品ではなく、サプリメントとして提供することで、通信販売や薬局、医療機関などさまざまなところで手に入れられるようになる。安全を大前提に、体調管理のために女性自身が選びうる新たな選択肢として、安心して毎日摂取できるサプリメントができれば、人びとの健康に貢献するだけでなく、ビジネスとしても強みになると信じていた。

写真提供=大塚製薬

「私は女性たちにただ受け身でいてほしくなかったし、解決策はあると示したかった。女性たちが自分たちの困りごとを能動的に解決していく手助けをすることで、女性の社会進出を後押ししたいと思っていたのです。世の女性たちの声なき声に応えるには結果を出すしかない。それにはなんとしてもエクオールでプロジェクトを継続したかったのです」