ロッテ「クーリッシュ」は2003年に発売した。棒、カップ、モナカのいずれとも異なる「飲むアイス」のクーリッシュはなぜ20年以上売れ続ける商品になったのか。高千穂大学教授の永井竜之介さんは「商品を『作る』だけではなく、『広める』『飽きさせない』という3つの要素を満たしたことで、『新しモノ好き』のみならず一般に普及する商品になった」という――。

20年以上の歴史を持つ「クーリッシュ」

口栓付きチアパック容器に入ったアイスのロッテ「クーリッシュ」は、棒・カップ・モナカのいずれとも異なるオンリーワンの「飲むアイス」だ。ロッテは国内アイス市場で17.6%(2022年度)のトップシェアをつかんでいる(※1)。その中でも主力ブランドの1つである「クーリッシュ」は、2003年の発売開始以来、20年以上にわたってアイス売り場で異彩を放ち続ける人気商品だ。

ロッテは、「ユーザーオリエンテッド(お客様第一)」「オリジナリティ(独創性)」「クオリティ(最上の品質)」の3つの価値を企業理念に掲げている。このうち、オリジナリティは、同社が競合他社よりも遅い1948年創業だったからこそ、独創性がなければ競争に勝てない、と重視し続けている指針だ(※2)

「クーリッシュ バニラ」(画像=ロッテプレスリリースより)

イノベーションに必要な3つの要素

独創性にあふれた「イノベーション(新しい価値)」を生み出すことで、ロッテは成長を遂げてきた。お餅とアイスを掛け合わせて独自の食感を実現した「雪見だいふく」、キシリトールを配合することで歯の健康を保つ「キシリトールガム」、そしてアイスとペットボトルの発想を掛け合わせた「クーリッシュ」などのイノベーションを、同社では「ロッテノベーション」と呼んでいる(※3)

イノベーションについて考えるとき、技術やアイデアの「作る」要素ばかりが注目されやすいが、「作る」がイノベーションのゴールではない。イノベーションは、まず作り、次に広めて、そして飽きさせない、という3つの要素が重要となる。「作る」「広める」「飽きさせない」、この3要素を実現することで初めてイノベーションとして社会に定着できるようになる。ここでは、「アイスのイノベーション」であるクーリッシュについて、3要素それぞれにおける成功の背景に迫ってみよう。