ライバルたちの長所を盛り込んだ「最高のアイス」として開発

「作る」

1980年代からペットボトルが普及して「いつでもドリンクを飲みたい分だけ飲める」ようになり、1990年代には24時間営業のコンビニのチルドデザートが人気を呼んで「いつでも冷たいデザートが食べられる」ようになった。こうしたライバルたちに押されて、2000年頃はアイス市場が低迷していた時期だった(※4)

苦境打開に向けて、ロッテは、これまでにない斬新なアイスの企画を目指した。アイスというカテゴリーにとらわれず、競合カテゴリーについて丹念な分析を進めた。持ち運びやすく、瞬間的なクールダウンができるペットボトル飲料の長所。保存性に優れたゼリー飲料の長所。口直しができるガムの長所。ライバルたちの長所をすべて盛り込んだ「最高のアイス」として企画されたのが、クーリッシュである(※5、7)

クーリッシュを開発するにあたって、当時、アメリカで流行っていたスムージーをヒントに、シャリシャリ感のある「飲むアイス」の開発に挑んだ。そのために、1999年に発売した自社商品「爽」の特徴である、微細氷でシャリシャリ感が楽しめる食感をさらに発展させることになった(※6)

「爽 バニラ」(ロッテプレスリリースより)
「爽 バニラ」(画像=ロッテプレスリリースより)

発売時は出荷制限がかかるほどの人気に

携帯性と保存性に優れる点から、業界で初めて採用したパウチ容器に適したアイスとなるために、微細氷の製造技術の進化に取り組んだ。微細氷の形・大きさやアイスの原料の配合比率を調整し、アイスミックスの中に微細氷と空気を含ませることで、冷凍庫から出して数分で飲めるようになり、ちょうどよく喉に流れ込む滑らかさ・喉ごし・味わいの実現にこだわり抜いた。この微細氷の製造技術や、微細氷がほぐれやすくなる技術は特許が取得されており、他社にはマネできない技術力によって商品が開発された(※4、6)

-15℃前後に凍らせて食べる一般的な硬いアイス、-5℃前後で食べる柔らかいソフトクリーム。その中間の-8℃前後の「シェイク」状態で冷たく飲めるアイスとして、3年がかりでクーリッシュは商品化された(※5、8)

2003年6月から首都圏限定で発売が開始されたクーリッシュは、斬新な「飲めるアイス」として予想を上回る売れ行きとなり、生産が追い付かずに出荷制限がかかるほどの人気を博した。この反響を受け、2004年には全国販売がスタートし、大ヒットを記録した。同年には「世界ヒット商品コンクール」でアジアの食品として初めて最高賞に輝き、最高のスタートダッシュを実現した(※4、5、6、7)