老後のお金の支出入を明るみに照らす

「定年後のお金は、お化け屋敷」という言い回しがあります。

これは、一寸先が闇。いったいこの先、どうなるか見当がつかずに恐ろしい、という意味です。仕事がなくなっても日々の生活は続いていく。自分自身が病気になるかもしれないし、親の介護が必要になるかもしれない。不確実性の高いことが多く、すべてがお化けのように思えてしまうのです。

でも、ひとたび支出入を明るみに照らせば、「こういうふうにやればいいんだ」と対処方法が見えてきます。退職金はこれぐらいで、年金はこれぐらいで、自分はだいたい何歳くらいまで生きるとしたら、生活費はこれぐらい必要……。一つひとつ考えていけば、必ず解は見つかるはずです。

その解を見つけるには、どうしたらいいか。

私は、まず一冊、定年後のお金に関する本を読むことをおすすめします。本を読むのが苦手な人は、ファイナンシャル・プランナーの方に相談してはいかがでしょうか。お金のプロのアドバイスを受けると、預金額や年金額などがすべて“見える化”されて、定年後の収入の減り具合と残り具合がわかります。

また会社員時代は、会社が半分出してくれていた健康保険料も、定年後は国民健康保険になり、「全額自分で支払うんだな」といった細かいことを知ることもできます。日本FP協会なら、全国8カ所で対面での無料体験相談を受けられます。1回受けると、本を一冊読むぐらいのことは教えてもらえますので、ぜひ受けてみて、そのあとどうするか決めていくのがいいでしょう。ファイナンシャル・プランナーに相談したことで、「もっと働かなきゃいけないなと思った」という塾生の方もいます。まさに自分の定年後の状況を知ったからこそ、会社を辞めなかった人です。

写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

老後資金を見直す人生の3つの節目

ですからまずは、「自分は定年後にどれぐらいの金額が必要か」。それを、定年前に立ち止まって考えてみましょう。そのきっかけになるのが、「役職定年」「早期退職」「子どもの独立」の3つの節目です。

まず役職を外れるときは、給料が下がるタイミングです。そのときに「まあいいか」と見過ごさず、その給料で生活できるのか、もっと必要なのかを考えてみましょう。また早期退職の募集が社内であったときは、やはり会社から社員に対して「うちの会社もいろいろ苦しいです。方向を変えています」というメッセージなので、自分のキャリアを考えるちょうど良いタイミングでしょう。さらに子どもの手が離れたら、教育費という支出が減るので、前ほどの収入は必要なくなります。必要な家の広さや暮らし方も変わりますので、地方移住や住み替えも含め、思い切った選択肢も取れるようになるでしょう。

こうした自分なりの節目に、年金額を調べるなり、定年後の職について会社に聞いてみるなりする。これが初めの一歩です。