三菱電機、ローム、キオクシア…続々と工場建設進む

一方、台湾で半導体人材は不足している。中国からの圧力や地震など災害の懸念もある。水や電力の不足も発生した。課題の克服、より効率的な事業運営を確立するため、TSMCは熊本県で第3工場の建設の可能性に言及した。

熊本県で三菱電機は、液晶パネル工場をパワー半導体の生産に転用する方針だ。宮崎県では、ロームがパワー半導体工場を建設する。米マイクロンテクノロジーは、広島工場をHBM(広帯域幅メモリ、データ転送が速い記憶装置)の主力生産拠点にする計画だ。HBMは、画像処理半導体(GPU)などの演算装置と組み合わせAIに使われるケースが多い。

三重県では、キオクシア(旧東芝メモリ)と米ウエスタンデジタルが四日市工場の生産能力の拡張に取り組んでいる。HBMで先行する韓国のSKハイニックスは、キオクシアへの生産委託を増やすことを検討しているようだ。

宮城県で半導体工場を建設予定のSBIホールディングスと、台湾の力晶積成電子製造(PSMC)は計画を拡張するという。北海道で2ナノ、さらに1ナノメートルの製造ライン稼働を目指すラピダスは、工場建設を急ぎ2025年からの量産開始を目指している。

写真=iStock.com/SweetBunFactory
※写真はイメージです

AI需要でデータセンターも建設ラッシュ

政府はラピダスへの融資を保証する方針だ。ラピダスは、米国のIBM研究所などに社員を派遣し関連技術の習熟を目指している。ラピダスは、世界で唯一極端紫外線を用いた露光装置を供給できるオランダASMLや、AIチップ分野でエヌビディアを追い上げるカナダのテンストレントとも協業する計画のようだ。

国内でデータセンターの建設も急ピッチで進む。2024年の国内データセンター投資は、昨年から1.5倍の5000億円程度に増加するとの予想もある。これまで、企業のデータ保存やクラウドコンピューティングサービスの利用で、データセンターの需要は増えた。

足許、わが国全体で安心・安全なデータ利用の需要も急上昇中だ。AI分野の急速な成長で、著作権、行動履歴、納税実績や勤め先などの個人データの重要性は高まる。IT先端企業はAIにより多くのデータを学習させ、推論能力を向上させることを目指している。