米4社が計4兆円規模の“対日投資”を発表

データの所有権や利用許諾などを明確に管理することは、市民生活にとって決定的に重要だ。そのために岸田政権は、政府クラウドの整備に取り組んでいる。政府クラウドとは、国や地方自治体共通のクラウドコンピューティング基盤をいう。関連分野で米国のグーグル、アマゾン、マイクロソフト、オラクルは計4兆円規模の対日データセンター投資を相次いで表明した。

足許、千葉県印西市などでデータセンター建設が急増中だ。印西市では、海外企業に加え、三菱商事と米デジタル・リアルティ・トラストの合弁会社、MCデジタル・リアルティも大規模なデータセンターを運営し、貸し出しは順調に伸びているようだ。

通信大手のソフトバンクは、液晶パネルを生産したシャープの堺工場の一部を買い取り、AI向けのデータセンターを構築する。堺事業所の土地の6割を取得して電源や冷却設備を導入し、2025年の稼働を目指す。操業が止まった工場、使われなくなった建物をデータセンターに転用するケースは増えそうだ。

AI分野の成長は、日本経済の構造を大きく変える

ソフトバンクは、北海道苫小牧市でも国内最大級のデータセンターを建設する計画だ。同社は大量の電力を賄うために、再生可能エネルギー利用も進める。北海道では、さくらインターネットも最大1000億円をデータセンター建設に投じる計画という。

さくらインターネットは、国内勢で初めて政府クラウドに認定された。同社は石狩市のデータセンターに1万基のエヌビディアの“B200”チップを搭載し、AI処理能力を高める方針だ。

世界全体で、効率的な企業の事業運営や経済安全保障体制の整備に向け、AIの研究開発は加速している。AI利用により、高性能なチップの必要性は高まる。半導体用の部材などの関連産業が集積している、わが国での半導体工場建設は増えている。AI利用やデータ主権確立もあり、データセンター建設も増えるだろう。

AI分野の成長は、わが国の経済の構造を大きく変える可能性を秘める。NTTは電力企業と組んで、温室効果ガスの排出が少ないデータセンターの運営に取り組んでいる。同社は“夢の半導体”と呼ばれる“光半導体”の研究開発も急ぐ。高速なチップをデータセンターに実装し、AI処理能力と省エネの向上を目指して成長する戦略は明確だ。