揺らぐ自動車業界を支える次の基幹産業に
米国や中国も、AI分野での需要創出を目指して半導体やデータセンター関連分野の産業政策を実施している。米国はTSMCなどへの補助金を積み増し、迅速な工場建設と稼働を求めている。中国は、政府系ファンドの資金量を引き上げた。ただ、両国の課題は多い。サプライチェーンの集積の遅れ、人材不足、そして素材創出・製造技術の不十分さなど、一朝一夕に解決することはできない。
既存の製造技術を組み合わせて、AIに対応した高性能のチップを低コストで製造する。インテルが、わが国の企業とチップレット関連の共同研究・開発を行うのはそのためだろう。
ほぼ同じタイミングで、同社のアイルランド工場の部分売却も明らかになった。インテルは、イスラエルでの工場建設計画を中止するとの報道もあった。エヌビディアを追いかけるインテルは、わが国半導体産業を重視しているとの見方もある。
わが国の企業にとって、そうした変化を確実に収益につなげる重要なチャンスだ。重要なことは、成長期待の高い分野で設備投資や研究開発を積み増し、高付加価値の(まねできない)製造技術に磨きをかけることだ。その場合、政府の支援策の重要性も高まる。
足許、認証不正問題でわが国経済を支えてきた、自動車の生産体制はやや不安定だ。それを埋め合わせるためにも、半導体工場・データセンターの建設ラッシュを成長産業の育成、中長期的な経済の回復につなげることは重要だ。その意味では、今、わが国経済は重要な局面を迎えている。