おいしそうな食品パッケージもあなたを狙っている

ドーパミン泥棒がうようよしているのはスマホの中だけではない。スーパーであなたに食品を買わせるには他の商品より美味しそうに見せればいい。まずはパッケージのデザインにこだわって消費者に唾を湧かせる。商品を手にして良い気分になることも重要だ。消費者の興奮がスーパーの天井を突き破り、クイック・ドーパミンが増加する。次の瞬間、同じブランドから新商品が出ているのに気づけば、ドーパミンはさらに増すだろう。

家に帰るとパッケージを開け、健康なおやつとうたわれる新商品を試す。するとけっこうな砂糖含有量のせいでドーパミンがほとばしり、素晴らしい気分になり、「これは美味しい。次も買おう」と覚え込む。しかしすぐにドーパミンのベースラインは下がり、脳は「こんな気分じゃ嫌だ!」と叫び出す。「もっとドーパミンをくれ!」

「ドーパミン泥棒」に捕まると最後はうつになる

普通ならば人から何かを盗むことには抵抗がある。特に子供から盗むなどあり得ないと思うはずだ。スウェーデンには「子供からお菓子を盗むくらい簡単」という慣用句があるが、この場合「子供からドーパミンを盗むくらい簡単」と言えるかもしれない。

デヴィッド・JP・フィリップス『最適脳』(新潮新書)

子供たちのドーパミンを極限まで出させるのが目的でアプリやゲームを開発しているとはあまりに非道な行為だ。大人ならまだ我慢するという選択肢がある。脳の前頭葉が成熟しているおかげで合理的に考える能力があり、子供やティーンエージャーよりも意志が強い。

おかげでクイック・ドーパミンではなくスロー・ドーパミンを選ぶこともできるのだが、それでもドーパミン泥棒に捕まっている大人が多すぎるように思う。捕まったが最後、ゆっくりとドーパミンのベースラインは下がっていき、何かを満喫したり純粋なモチベーションを感じたりすることは減っていく。それが虚無感、気分の落ち込み、最悪の場合にはうつにつながる。

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