天ぷらの衣は「分厚いほうがいい」

なぜ日本の外食企業がハワイでうまくいかないのかを理解するために、現地の経営者たちにもヒアリングを重ねたところ、ハッとさせられたことがあります。それはニーズの優先順位です。日本と違ってハワイでは、「ボリューム」「エンタメ性」「価格」「味」の順に価値を求められるというのです。

そのことを教えてくださった経営者の方々のお店は、軒並み繁盛していました。もちろん、味がどうでもいいわけではありませんが、ニーズを意識した設計が重要なのです。

「捨てるべき」と言うのは大げさかもしれませんが、こだわり過ぎず、地域の文化・習慣や嗜好に合わせていく。まさにローカライズさせる余白をもっておくことが大切です。ただしこれはけっこう大変な作業で、丸亀製麺でも苦労がありました。

オープン前に、現地のニーズや嗜好などを調査して試作したメニューを現地の人に実際に食べていただきフィードバックをもらう、テストマーケティングを実施しました。すると「日本の天ぷらは柔らかすぎる」「衣は分厚いほうがいい」など、日本国内ではありえない意見や要望が飛び交いました。

「うどんにも天ぷらにもコーラが合う」驚きの結果も

なかでも最後まで頭を悩ませたのは、「うどんにも天ぷらにもコーラが合う」という日本人には驚くべきリサーチ結果と意見です。あまりにも日本とは感覚や発想がかけ離れていましたが、最終的には粟田社長が「これが世界なのかな」と決断され、導入を決定しました。

いまでは店内には、コーラ片手にうどんや天ぷらを食べている人が本当に多く、そのときの決断が、オープンから13年たっても行列が絶えない要因のひとつになっています。狙うマーケットと自社のことをよく理解をしたうえで海外展開すれば、日本企業が世界で喜ばれるサービスを提供する余地は十分にあるのです。

2つめは、交渉のベースを自分から用意すること。

未知の地域や商習慣のなかで事業を行う場合、現地の相場やルールを学んでおかないと、契約後にあとに引けなくなることがよくあります。最初は誰もが知らないことだらけなので、調べることは当然ですが、自分より詳しい人に相談することが必要です。「そんなの当たり前」と思うかもしれませんが、わからないまま契約をしてしまい、トラブルになってから相談をされるケースが多々あります。