「最初の上司」が口が裂けても言っちゃダメなセリフとは

リクルートマネジメントソリューションズのトレーニングプログラム開発グループの桑原正義主任研究員はこう指摘する。

「その人の個性や人格を否定する発言は絶対にやってはいけない。以前は新人や部下がミスを繰り返すと『親の顔が見たいわ』といった発言を普通にしていたが、今では完全にアウトだ。以前、新人に対し、言われて嫌だった言葉を調査したが、1位は『そんなことも知らないの』だった。特にビジネスマナー系では『そんなこともできないの』と『学校で習わなかったの』という言葉が出がちだが、注意してほしい」

また、新入社員研修をはじめ企業研修を手がけるALL DIFFERENTの組織開発コンサルティング本部シニアマネジャー・開発室室長の根本博之CLO(最高育成責任者)はこう語る。

「新人を呼ぶときに昔のように『お前』と呼ぶと、敬遠される。また、人によって呼び方を変えるのもよくない。ある新人は名前を呼び捨てにして、別の人間にはあだ名で呼ぶとか、呼び方を変えると、結構、敏感に察知する傾向があり、注意してほしい。新人がミスしても『二度とするなよ』と言うだけではいけない。なぜやってはいけないのか、その理由をちゃんと伝えること。『こんなこともわからないのか』ではなく、『こうするといいよ』とか、前向きに動けるようにすることが大切だ」

「お前」はもともと目上の人に対する敬称だが、「親しみが感じられなければ不快」と受け取る若い世代も多い。

ミスしても注意するより、改善方法を教えるのが正しいということだ。

写真=iStock.com/metamorworks
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リクルートマネジメントソリューションズの武石美有紀研究員は「あなたの敵ではない」ことを示すことが大事だと語る。

「今年の新人育成の場面でも感じたが、怒られることに慣れていないために、怒られたくない、失敗したくないという思いが強く、それを怖がっているように感じた。当然、上司と部下は、評価し、評価される関係なので敵味方の構図になりやすいが、本当は共通の目標に向かってがんばっている仲間であることを示すことが大事だ。仕事の目的を新人と共有すること、そしてフィードバックにおいては『こういうことがあったら指摘するから』とか、事前に合意しておくとよいだろう」

腫れ物に触る、あるいは薄氷を踏むような接し方であるが、大事なのは教える側と教えられる側がお互いを知るための対話というのが人事の現場の総意だ。昔から「最初の上司が、その後の運命を左右する」という格言があったが、「上司ガチャ」とならないように注意したい。

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