各省庁は亮平の声を採用したらいいのでは

最もしっくりくるのは正確無比な指示を出し、チームを率いるリーダー役。

「彼岸島」(2013年・TBS系)では自らがうっかり封印を解いてしまった吸血鬼の征伐に、弟たちを巻き込みつつ立ち向かう役、「TOKYO MER」(2021年・TBS)では緊急救命医療のエキスパート役。とにかく声が通って、滑舌がよい。

滑舌の悪さはご愛敬、役者の持ち味とも言えるのだが、逆に滑舌のよさは天性の才能だけでなく、努力の裏打ちをも感じさせる。耳の遠い年寄りでも、たとえ3倍速にしても、鈴木亮平の声だけは聴きとれるという現象で、茶の間では大人気。というか、各省庁は緊急時のアナウンスに亮平の声を採用したらいいのではないかと思うくらい。

「西郷どん」(2018年・NHK)でも薩摩弁を武骨かつ流暢にこなして、大河主演を立派につとめあげた。これが亮平の「全世代・全周波数制覇期」。国民的人気と好感度を最大限に上げたあたりで、またトリッキーな方向へいくわけですよ、彼は。

映画『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)のムショあがりの極道・上林役は、そらもうヒィッと悲鳴を上げるレベルの凶暴さ。想像しうる限りの悪行三昧、同情の余地を1mmももたない悪役を怪演。「下剋上球児」(2023年・TBS)で教員資格を持たずに詐称したくらい、屁でもない罪じゃないかと思わせるほどの極悪人だった。

「いい役者は気配を消せるんだな」

全裸→形状記憶→インテリ→リーダー→外道と、善も悪も裏も表も意表をついて、依頼に忠実に演じてきた彼が、長年の憧れで念願の冴羽獠になりきれたことを心から祝福して賞賛したい。

個人的な趣味で言えば、ちょっといけすかない狡猾な男を演じる亮平か、逆に自信もオーラもない怯えた男を演じる亮平がいいと思っている。「エルピス」(2022年・フジ系)で演じた抜け目ないテレビ局報道のエース記者・斎藤正一の役が、最高にセクシーだった。全裸じゃないのにセクシー。むかつくけどセクシー。これに同意してくれる女性がいることを願う。

逆に、映画『ひとよ』(2019年)で見せた怒りを内包する長男の役も印象的だ。肉体と知性で手にしてきた栄華をまったく感じさせず、うだつの上がらない長男を小さく見せることに成功している。ずん飯尾和樹を彷彿とさせ、「いい役者は気配を消せるんだな」と改めて思わせてくれた。

演じる役を狭めず、方向性と可能性を伸展&拡張させてきた鈴木亮平が、今後どこへ向かっていくのか。日本を飛び出してほしい気持ちと、ドメスティック&ストイックに追求してほしい気持ちと、両方ある。

Netflix映画『シティーハンター』 Netflixにて世界独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985
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