俳優のムロツヨシ(47)は、なぜ人気者になったのか。ライターの吉田潮さんは「コメディからシリアスな作品まで演技の幅は広く、実力は日本の俳優の中ではトップクラスだ。それでいて好感度が高い。とりわけ交友関係の健全さは、この時代には強みになる」という――。
ムロツヨシ
写真=時事通信フォト
ムロツヨシ[ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で行われた映画『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』の公開記念イベント、大阪市此花区]

ドラマ、映画、CMと引っ張りだこの人気俳優に

この2週間強、彼のことばかり考えている。気分は黄金原聡子。NHKのコント番組「LIFE!」で、シソンヌのじろうが演じた熱狂的なファンの女性である。誰のファンかというとムロツヨシだ。あまりに考えすぎて、念が歪んで飛んでしまったのか、「ムロツヨシが腹膜炎で入院」のニュースが流れてきた。快復を祈るばかり。

「カタカナ5文字」、「愛嬌あいきょうあるほくろ」、「友達多そう」。ムロツヨシは、いまや主演も務め、老若男女だけでなく動植物や有機物からも好感をもたれる勢いの人気俳優だ。

NHK大河「どうする家康」では晩年に老害と化した豊臣秀吉を怪演、10月期は芸能マネージャーからパラリーガルに転職したワケアリ男として「うちの弁護士は手がかかる」(フジ系、毎週金曜21時~)で主演、来年2月には主演映画『身代わり忠臣蔵』も公開予定。引っ張りだこの彼がいかにしてスターダムに上り詰めたのか、軌跡を振り返ってみる。

ハマり役は「ちょっと顔が濃くて言動がウザい人」

最も古い記憶は「なんか変な人」。讃岐うどん宣伝映画『UDON』(2006年)で東京から来た浮わついた観光客の役だ。タンクトップなのに首にマフラーを巻いた男がムロツヨシだった。セリフはなかったと思うが、「矛盾してんなぁ」と記憶に残った。

その後、ドラマ『プロゴルファー花』(2010年・日テレ系)で、チンピラ金融(佐藤二朗)の弟分役で悪ふざけする姿に笑った。ヤッターマンで例えるならばボヤッキー&トンズラー的立ち位置。とにかく軽妙なコメディでじわじわと着実に幅を広げていき、特に福田雄一作品で知名度は爆上がり。

テレ東の『勇者ヨシヒコ』シリーズで演じた金髪マッシュボブの魔法使い・メレブ役は適役で当たり役だ。絶妙なアシストの陰で巧妙な功名心や嫉妬を全開、「ただのいいヤツ」では絶対に終わらせない脇役の矜持を感じた。どこにでもいそうな、ちょっと顔が濃くて言動がウザい人の役をやらせたら右に出る者はいない、そう思わせた。

賛同する人が少ないが、ムロツヨシはパーツイケメンである。誰が何と言おうとパーツは二枚目。何かとほくろを強調したり、天然パーマを悪目立ちさせる役を演じるのも、そもそも美形だからだ。そのおかげで二枚目役は皆無。二枚目役と積極的かつ意図的に競合しない、という盤石の防御策が功を奏したとも思っている。