フジテレビのバラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」(1997-2018)の名物企画「男気ジャンケン」はどのようにして生まれたのか。テレビディレクターのマッコイ斉藤さんの著書『非エリートの勝負学』(サンクチュアリ出版)より紹介する――。
ジャンケンのグーとパー
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遊びの中から生まれた名物企画

俺が関わる番組の会議は、いつもすぐに終わった。

遊びで面白いことを思いついて、それをそのまま会議で発表して、みんなが笑えば、「じゃあ、やろう」でおしまいだからだ。このスタンスは基本的に「みなさんのおかげでした」でも変えなかった。日常の遊びの中から、いくつも名物企画が生まれた。

たとえば、スギちゃんがロレックスのデイトナレパードを買い、バナナマンの日村勇紀くんがポルシェを買い、狩野英孝がレンジローバーを買い、おぎやはぎの小木が金の延べ棒を買い、出演者の買い物総額が1億円を超えた「買うシリーズ」もそうだ。

あの企画は元々、ある芸人とプライベートで北海道に行ったとき、その人から「おまえ、これ、いいから買ったら?」と80万円するルイ・ヴィトンのバッグをすすめられたことからはじまる。

大先輩の言うことだから……と意を決して買ったら、会計後に「おまえ、なに買っちゃっているの?」と茶化されて、本気で悔しい思いをした。あの悔しい思いをカタチにできたら。

そう思って「買うシリーズ」として会議に企画を出してみた。すると場の反応が「面白い」だったので、1回目の「日村、時計を買う」につながった。

企画会議はプレゼンの場ではない

企画会議はプレゼンするのではなく、反応を確かめる場だった。なにも考えずにぽんと出してみて、場の全員が「面白い」と言えば、名物コーナーになる可能性がある。

「2億4千万のものまねメドレー選手権」もそう。大先輩の誕生日会で、日村くんが郷ひろみさんの「2億4千万の瞳〜エキゾチックジャパン〜」のカラオケを流しつつ、いろんな有名人のものまねをしながら歌ったのがめちゃくちゃ面白くて、参加者みんなが爆笑した。

するとその場にいた他の芸人も真似して、同じ「2億4千万の瞳」を流して、それぞれがものまねを見せていき、爆笑が連鎖していった。その後「2億4千万の瞳」の1コーラスの中に、最低でも5人の有名人のものまねを組み込むというルールをもとに笑いを競い合う「ものまねメドレー選手権」となり、あのときの爆笑を再現することができた。