日本で一番芸能人を落とし穴に落とした男

事前になにも知らされていないターゲットが、呼ばれて歩き出し穴に落ちる、その姿やリアクションの美しさを競うドッキリコーナー「全落・水落シリーズ」は、落とし穴を用意して、ただ落とすだけの極シンプルな企画だ。

でも、そこには「人間好事魔多し」という裏のテーマがある。俺の人生がまさに、いいことが続いていると、突然とんでもなく悪いことが起こる、ということをくり返していた。人間いつ地獄に落ちるかわからない、とは誰もが頭のどこかではわかっていることだ。

だがふだんは意識をしていない。だから身をもってわからせる。慣れた仕事だと思って気を抜いていると、いきなり落とし穴に出くわす。そういう人生の縮図を、みんなで観察するという構図になっている。

ちなみに俺はおそらく日本一、芸人さんやタレントさんを穴に落とした男だろう。中でも印象的な「全落ハワイアンオープン」という企画では、ハワイを2度訪れ、予算1億円かけて、20個の落とし穴を作り、豪華芸能人たちを次々と穴に落としていった。あとで局から「金の使いすぎだ」と怒られたが、こんな仕事ができて俺は幸せだった。

著者近影
写真=名越啓介
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ヒットする企画の特徴

なかなかヒットが出せなかったとき、ある売れっ子の放送作家さんからもこんなヒントをもらったことがある。

「マッコイさん、視聴率が悪い番組10本見て、その後に視聴率のいい番組10本見てください。そしたらなにかわかりますから」

なるほどと思い、おれは素直に試した。そしてある日気づいた。おそらく世の中でヒットを連発する人はみんな気づいているのだろう。視聴率の高い番組はすべて、パッと見ただけでほぼ内容(面白さ)がわかるのだ。

『行列のできる法律相談所』も『世界一受けたい授業』も『世界の果てまでイッテQ!』も『笑点』もそう。その考え方を、俺は「1行理論」と名付けている。『笑点』にいたっては1行どころか、ひと言だ。なにも難しいことはなく、ヒットする企画は、1行の説明で伝わる。

反対に言えば、くどくど補足説明が必要な企画がまずヒットすることはない。「買うシリーズ」も「2億4千万のものまねメドレー選手権」も「男気ジャンケン」もそうだ。どれも1行で内容を説明することができたし、それを聞いた人にも一発で面白さが伝わった。

「見た目は汚いがうまい店」を表彰する「きたなトラン」も、「見た目は汚いがうまい店」というものに、誰もが心当たりがあるから、全国の人たちの興味を引くことができた。