私が200万円のワインを購入し、それを人に振る舞う理由

ただ、そこで大事なのは、見返りを求めないということです。

「期待したほど喜んでもらえなかった」「十分なお礼がなかった」など、見返りがないことでいやな気分になるのであれば、親切にする意味がありません。お金を貸すなら、あげるつもりで貸すようにしたほうがいいでしょう。

「いい加減」とは、結局のところ、自分にとっていいさじ加減、自分自身がいい気分になるかどうかの塩梅です。どんなことも、それを基準に判断したほうがいいと思います。

何が正義で何が悪かなど、客観的な基準に基づいて規定できることは、実は世の中にはほとんどありません。お金だけは、数字で損をしたか得をしたかがわかると思うかもしれませんが、金銭的に損をしたとしても、自分の気分がよければそれでいいはずです。

純粋に金銭的な損得で言うなら、形のない消費である映画などのエンターテインメントは、基本的にすべて損ということになります。しかし実際は、個人の満足度という数値化できない基準によって、それぞれの人にとっての価値が決まります。

私も、100万円や200万円という価格のワインを手に入れ、それを人に振る舞うこともあります。それも見栄っ張りと言えばそうかもしれませんが、そのときの気分のよさがあるからこそ、たまに著書が売れたときぐらいは、そんなことをしてもいいかなと思っているのです。

話を聞いてもらえないなら相手を代える

建前だけでつき合っていても、お互いつまらないはずです。相手が自分とのつき合いを楽しんでいないように感じるとしたら、無理をしていないかと相手に率直に尋ねることができれば、それに越したことはないと思います。

「自分は相手とのおしゃべりを楽しみたいと思っているのに、相手はなんだかつまらなそう」
「こちらが相手に聞いてほしいことや、関心のある話題について熱心に話しても、相手の反応がいまひとつで、自分が一方的に話しているような気がする」

そんなときは、「話す相手を代える」という発想もあっていいと思います。

「あの人は私の話を聞いてくれない」などと、相手に対して不満を募らせるよりも、相手を代える。その当たり前のことをしない人が多いと感じます。

話す相手はほかにいくらでもいます。そして、人には相性があります。

たとえば、自慢話は誰も聞きたがらないので、しないほうがいいものとされています。でも、それを楽しんで聞いてくれる人も、いないとは限りません。

子どもや孫が一流大学に合格したという自慢話は、聞かされたくないと思う人も多い一方で、それを聞いて、自分の子どもや孫の受験のヒントを得たいと思う人もいるでしょう。

和田秀樹『65歳からのひとりを楽しむ「いい加減」おつき合い』(PHP研究所)

実際、子どもを全員東大理科III類(医学部)に合格させたという母親が、教育のカリスマ的な存在として著書を出したり、講演したりしています。そこで語られる話は、結局のところ自慢話なわけですが、自分の子どもの受験を成功させたい親が、熱心に耳を傾けています。

一般論としては、話をするときは相手の反応を見たほうがいいし、相手がつまらなそうにしているなら、話題を変えるなどの対処をしたほうがいいでしょう。

そのとき、自分が話したいことを、興味深く聞いてくれる相手はほかにいるかもしれないのだから、目の前の相手だけに聞いてもらう必要はないのだと思うことができれば、気がラクになるのではないでしょうか。

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