苦しいことを楽しいことに変えることもできる

報酬だけでなく成功体験やポジティブな感情を得られる体験を脳は積極的に探しています。ラスはその情報に着目して、同じような成功体験を再現する行動を促します。また、内発的動機が高まると、人は自らのスキルと課題のバランスがとれる「フロー状態」に入りやすくなります。

フロー状態では、時間を忘れるほど集中力が高まります。あなたも仕事や勉強でおそらく一度は体感したことがあるでしょう。あれは内発的動機がもたらすものなのです。

この「フロー状態」が体験されると、脳はその経験を特に重要視するので、ラスを通じて深い学習や行動の定着につながります。行動の動機が内発的動機に基づくようになれば、意識しなくても毎日の行動に組み込めるようになります。

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「ああ、嫌だな」という気持ちを抱かずに取り組めるようになっているはずです。歯を磨くのも自転車に乗るのも、筋トレも語学も変わらず向き合っている自分がいるはずです。

習慣化に向けて行動を始めたばかりのときは勉強や筋トレ、ジョギング、食事制限などは苦行以外のなにものでもないかもしれません。ただ、認知科学のプロセスをうまく生かすことで苦しいことを楽しいことに変えることもできるのです。

脳の「GPS機能」は3週間で定着する

そして、この脳の「GPS機能」は3週間で定着することが分かっています。こう聞いて、「3週間続けるだけで本当に習慣が定着するかどうか」と思うかもしれません。

確かに、これまで何度も習慣化に挫折してきた人の中には「1カ月続けたけど、習慣化できなかった」「2カ月続けたけどしんどくなってやめちゃった」という人もいるかもしれません。

習慣化には一定の継続は必要ですが、必ずしも長く続ければいいというわけではありません。重要なのはプロセスです。

脳の「GPS機能」は、複雑な神経ネットワークの一部であり、情報の仕分け場であることはこれまでにお伝えしてきました。大量の情報の中から人が重要な情報と認識した情報を抽出し、特定の行動を後押しします。

これにより目標を達成したり、習慣化につなげたりすることが可能になります。ですから、どの情報を取り入れるか、どのくらいの注意を向けるかを選択するプロセスをつくることが新しい行動や習慣を獲得する際には欠かせないわけですが、このプロセスは習慣化に向けた行動を始めてからの最初の3週間が特に重要になります。