「9時に寝ないとキレる子になる」に根拠はない

――親が「その時間までに寝かせなければ」とプレッシャーに感じている部分も大きいですよね。

【森戸】たとえば「午後9時に寝ないとキレる子になっちゃう」という説に根拠はないんです。「何時から何時まで寝てなくてはいけない」ということにも同様に根拠がありません。

「大体同じ時間に寝る」のがいいんですね。“概日リズム”や“サーカディアン・リズム”というんですけど。大体同じ時間に同じことをすることで、毎日のリズムができて、ホルモンの分泌に合わせてスムーズに行動できたり交感神経と副交感神経のバランスもよくなったりします。

子どもの問題行動……保護者にとって問題に感じられる子どもの行動が起こりやすいのは、そういったリズムがなく、毎日バラバラな時間に寝るケースに見られます。例えば21時以降に外出することが週2回以上ある、布団に入ることが23時以降になることが週4日以上ある、外出先からの帰宅が21時以降になることが週3日以上あるといったことです(神山潤 日本小児科学会雑誌 vol.115 2011)。

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保育園での昼寝をカウントしてOK

――保育園のお昼寝は、子どもの睡眠としてカウントしていいものなのでしょうか?

【森戸】もちろん、カウントしていいです。

――2時間くらいは寝てますからね、保育園で。

【森戸】そうなんですよ。丸々2時間寝ちゃったあとに、7時に帰ってきて9時なんかに寝られないですよね。ご飯を作って食べさせて、お風呂に入れて、歯を磨いて……で何かあると押せ押せで遅くなっていくものです。「実は大きな声では言えないけれど、いつも寝かせるのが10時なんです」と言う方もいるんですけど、「いやあ皆さん、そんなですよ」って外来でもお話ししています。

――10時でも大丈夫なんですね。

【森戸】はい。何時に寝るかよりも同じ時間に寝て、リズムを整えることを意識するのがいいと思います。

――なんか、「9時までには寝かせるべし」という思い込みがある気がします。

【森戸】ええ、なぜ9時なのかよくわからないのですけど。幼稚園の子で「毎日8時に布団に入れます。でも2時間寝ません」といった話もよくあります。それは「8時じゃなくて9時に寝かせれば1時間で済むからいいんじゃないですか」とお話をするんですけど。2時間も「なぜ寝ない……」と思いながら添い寝していたら親もイライラするし、親のイライラは子どもにも伝わってしまうし、お互いに良くないと思うんです。8時にスムーズに寝て朝早く目覚める人だったらいいんですけど、子どもがそうとは限らないですよね。

――では、基本的には子どもが寝たくなるちょっと前に布団に入ればいいと。10分前とか。

【森戸】そうですね、10分前でもいいと思います。